露津まりいさんの連載サスペンス小説 『贋物師-フェイク・マスター』(第14回) をアップしましたぁ。贋作師の頭領・深山は 『源氏物語絵巻』 を使って最後の大勝負に出るようです。おおっ、すんごい展開だなぁと思ってしまひました。いくら石川が不肖だとはいえ、『源氏物語絵巻』 くらいは知っております。国宝中の国宝の一つで、展覧会が開かれるとバスで閲覧ツアーが組まれるほどの人気です。
そんで 『源氏物語』 は 54 帖あり、『源氏物語絵巻』 も元々は 54 帖分あったようです。しかし現在確認されている 『源氏物語絵巻』 はその約 4 割です。じゃあ残り 6 割は失われてしまったのかといふと、そうとも言えないらしひです。そのいくつかの断簡は、恐らく日本各地に残っている。『源氏物語絵巻』 は明治維新後に散逸して各所有者に分蔵されるようになったわけですが、当時ですら相当に高価だった。大金を出して買った物で、しかも持ち運びしやすい絵巻が、そう簡単失われるとは考えられないのです。
加えて日本の国宝制度が引っかかっているようです。国宝に指定され、それを個人で持っていると、日本では耐火構造で湿度調節機能付きの部屋で保管しなければならない義務が生じます。その費用は全額個人負担で国の補助はありません。国宝を持っているからにはそれくらいのお金はあるでしょ、面倒なら美術館に預けるか、寄附してちょうだいという国家の意思の婉曲表現かもしれませんね (笑)。人に聞いた話ですが、美術展で個人蔵となっている絵巻などは、古美術商の所有物であることが多いそうです。
ですから 『源氏物語絵巻』 は現実に市場に眠っている可能性が高い。そこに目を付けた露津さん、やるな~といふ感じです。贋作を扱うサスペンス小説の小道具としてはうってつけです。派手ではないですが 『源氏物語』 人気はいつの時代でも衰えません。そのヴィジュアル版である 『源氏物語絵巻』 が市場に出たとなると、心狂い出す人は必ずいるでしょうね。小説のラストに向けての舞台が整った感じがします。
■ 露津まりい 連載サスペンス小説 『贋物師-フェイク・マスター』(第14回) pdf版 ■
■ 露津まりい 連載サスペンス小説 『贋物師-フェイク・マスター』(第14回) テキスト版 ■