後藤弘毅さんの映画批評 『 No.013 『アンダーワールド』―ゴシック・ロマン的主題 』 をアップしましたぁ。後藤さんの映画評、絶好調ですね。『アンダーワールド』 は 2003 年公開のアメリカ映画で、ケイト・ベッキンセールさん主演です。
『アンダーワールド』 は、ゴシックロマン的世界といふか、雰囲気を背景にした作品のようです。しかしファッションだけではなく、そこには文化的な要素が色濃く反映されています。後藤さんの批評によると、レン・ワインズマン監督は、ゴシックロマン的世界を使って上流階級 (富裕層) vs 下層階級 (貧民層)、白人対黒人の人種問題などを描いています。言うまでもなくそれはアメリカが抱える最も大きな問題であります。
アメリカはイギリスの功利主義哲学を色濃く受け継いでいますから、白か黒かの二項対立が大好きです。それが日本などの (フランスもちょっとそういうところがありますけど)、判断に最初から灰色も混ぜてしまう国から見ると、実に単純で、時には暴力的なまでにガサツに見えることがあるわけです。
しかし二項対立的思考ってとても重要だと思います。灰色の判断は、本来は二項対立で解決できない場合に持ち出すべきで、最初から曖昧な認識に留まっていては思考は先に進まないのです。文学者の出身学部などと言い出すとなにやら権威的ですが、漱石や西脇順三郎など、思いきった仕事を残した方には英文科卒業といふ人が多いです。
灰色に頼らずにまず白か黒か思考の基点を決めてみる。そうすることで見えてくるものは、曖昧で混乱した灰色のなかをグルグルしているよりもずっと実り多いのではないでせうか。で、映画 『アンダーワールド』 は、まったくもって白と黒の映画のやうですぅ (笑)。
■『 No.013 『アンダーワールド』―ゴシック・ロマン的主題 』 URL■