長岡しおりさんの文芸誌時評 『No.002 papyrus 2012年6月号』 をアップしましたぁ。幻冬舎さんは、小学館・祥伝社的な出版ビジネス路線と、大衆文学・純文学取り混ぜた文学ビジネスの両方を手がける出版社さんであります。表紙は小野恵令奈さんの水着写真です。Wikiで調べたら、「えれな」さんと読むようです。読みにくい名前が激増しておりますなぁ。女優で歌手の方のようです。
長岡さんは三崎亜記さんの 『Imaginary Reportage』 を取り上げておられます。三崎さんは映画にもなった 『となり町戦争』 を書かれた作家の方です。どこにでもあるとは言いませんが、それほど珍しくはない事件をきっかけに、そこから物語を展開させてゆくのが得意な作家さんです。今回は 「七十年前の書物に書かれている 「ガミ追い」 という風習を現代に再現した若者のグループのドキュメンタリー」 という形式の作品であります。
ドキュメンタリータッチの作品は、古くは安部公房の 『砂の女』 などがありますが、リアリスティックな記述を守りながら、そこからどこまで読者をフィクショナルな世界に誘っていけるかが勝負です。また小説の核心であるフィクショナルな世界は、もちろんリアルな描写では表現できない、人間本質に届いている必要があります。
三浦さんの小説では 「ドキュメンタリーの最後、リーダーの小早川をはじめとするメンバーが次々と死に、「ガミ追い」 は三年におよぶ活動をやめ、解散状態」 となります。また 「それを祟りだ、と言うのは簡単だ。が、むしろ 「人生」 そのもののようだ」 という結論に達します。「何かを 「追う」 者は 「人生」 を 「負う」 のだということ」 が、小説の要になっているわけです。まさに 『Imaginary Reportage』 ですね。
ところで金魚屋プレス日本版では、文学金魚のオープニングイベントとして、『安井浩司墨書展』 を開催することになりました。すでに安井氏へのインタビュー等は終わっており、現在、図録を作成中です。また墨書展は画廊で開催しますが、今年の10月あたりを予定しています。
加藤郁乎氏がお亡くなりになった今、名実ともに、前衛俳人と呼べる俳句作家は安井氏ただ一人となってしまったと思います。また安井氏は前衛俳人というレッテルを超えた、俳句文学の原理を考え抜かれた作家です。安井墨書展の詳細は、これから徐々に文学金魚HPにアップしていきますので、みなさんチェックしてみてくださいね。