池田浩さんの『S-Fマガジン 2012年5月号』の時評をアップしました。池田さんの分析、面白いです。「S-Fマガジンには「状況」がない」、それが「S-Fマガジンを50年以上も刊行させてきた」理由だという指摘や、原稿に「カタカナだけでなく、漢字も多い」というのは、言われて初めてなるへそと思うところであります。
僕も学生のころにずいぶんSFを読んだのですが、考えてみればアシモフやブラッドベリ、K・ディック、レムなどの古典が多かったなぁ。『S-Fマガジン』ではブラッドベリの再評価というか、新しい読み方を試みているようですが、やっぱりそのジャンルを最初に作り上げた人は強いということなんでしょうね。
この前、寺田農さんの『池袋モンパルナスへの旅』というインタビューをアップしたんですが、池袋モンパルナスのメンバーは多様で、最後期の住人に、円谷プロで怪獣の造形を行った高山良策という方がいます。初期円谷怪獣のほとんどは、成田亨デザイン、高山良策造形で作られています。
成田亨デザイン・高山良策造形の怪獣は、カネゴンやバルタン星人など、僕らが怪獣というとすぐに思いつくものばかりです。彼らは怪獣を最初に作り上げた人たちなんですね。それ以降、様々なデザイナー・造形家が新しい怪獣を作りましたが、とうとう成田・高山コンビの作品を抜けなかったような気がします。
こういう歴史というか、結果は考えさせられますね。戦後のある時期のように社会が安定して成長している時は、直前の世代の仕事を引き継ぐだけで仕事ができます。しかし社会が大きく変化してくると、過去をなぞるだけの人たちの仕事は衰退していきます。
内容だけでなく、流通も含めて文学を含む世界は変わっていくのですから、なんらかの形で新しい仕事をしなければなりませんね。文学金魚でそれができたらいいんですけど(笑)。ではまた明日~。