テレビ朝日
金曜 23:15~
「信長のシェフ」と同じ、テレビ朝日系の金曜ナイトドラマ枠で、やはり似たような傾向がある。一言で言えば、あまり関連性のない二つのものを結びつけて話を仕立てる、それがオリジナルでなくて原作マンガがある、という点だ。資料を駆使したり、絞り出すような無理スジででもストーリーを作り上げてしまうのは、マンガ制作の方に一日の長があるらしい。
もう一つの共通点としては、わりあいに数字がいい、ということである。「信長のシェフ」も同様だったが、まあ、夜の11時ともなると、ずっしり重い、しっかり作り込んだものだと消化不良でもたれる感じがする。もちろん佐藤浩市あたりが主演の、どーんとした「人間ドラマ」をこの時間帯に消費してしまうのは、局としても豪気にすぎよう。若手を中心とした、比較的イージーなマンガチック・ストーリーに豆知識を組み合わせたぐらいで、眠気のさした頭にはちょうどいい。そして、だんだんと観るものがなくなる時間帯でもある。なおかつ寝る前のあれやこれやを片付けている間、テレビでも鳴っていなければ心細い深夜でもある。
違いと言えば、このタイトルぐらいのもので、「信長のシェフ」は日本の「戦国時代」と横文字の「シェフ」という異和の組み合わせがタイトルにはっきりと出ていた。この異和を実現するために、「タイムスリップ」という、これまたお気楽な仕掛けがあったのだった。が、「お天気お姉さん」はそのままで、ミステリードラマとは思わない。
思わないんだけれども、これはこれでなかなか秀逸なタイトルだと思える。番宣なんかで、ちらっと見たときには、昔で言うトレンディ・ドラマ(ってのも、あまりにも古いか)で、まあラブコメの類いだろうと思うわけだが、ふと気づくと遅い時間にやっている。で、女子アナとのつばぜり合いとか、「ゆとり」(世代の教育を受けた、使えない若手の意)と呼ばれる社員とか、ラブコメにありがちな組織の風景があって、ほんでそこに何でか事件が起きる。
お天気お姉さんは気象予報士という科学者であって、女子アナでもレポーターでもない、ということなのだろう。科学者であれば、謎解きをしても不思議はない。が、そこには女子アナやレポーターと同一視される雰囲気もあり、そこで媚びないことが別種の売りとなって人気を博すというテレビの不思議はある。
謎解きのシーンにかかったときの辛気臭ささと妙な暗さは、「お天気お姉さん」というタイトルにも舞台設定ともそぐわない、ある異和を感じさせる。深夜の疲れた頭で、なんか変だな、と思いつつ、つい見てしまう、というのは計算されているかどうかわからないが、ありだと思う。
そのそぐわなさというのは、見慣れたテレビドラマの定石とのズレにすぎないのだ。本来的には荒唐無稽の話に与えられた、このそぐわなさは、ぐるっと巡って奇妙なリアリティを感じさせすらする。「お天気お姉さん」の脳天気ではないある種の暗さは、この原作がマンガを抜け、本物のお天気お姉さんが生息するテレビ局で制作されることで意味を獲得したかのようだ。
田山了一
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■