星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第17回)をアップしましたぁ。星さんが戻し訳をしておられる末松謙澄英さんは明治初期のジャーナリストで政治家です。最幕末の安政2年(1855年)生まれですが英語をマスターしたことが末松さんの生涯を決定づけた。英語記事を翻訳するジャーナリストとしてキャリアをスタートさせましたが、当時のジャーナリズム界の大物、福地源一郎から伊藤博文を紹介されたのを機に政界に転身します。第一次、第二次伊藤内閣で要職を務めました。
本業は政治家と言っていいのですが、『源氏物語』を始めとする日本文学の英訳や、英詩などの翻訳も精力的に行いました。ケンブリッジ大学に留学して法学士号を取得している秀才ですから本当に英語に堪能だった。演劇改良運動にも携わっています。明治初期の政治家・文化人には日本を背負って立つような気概の方が多い。政治家、経済人でも文化に造詣の深い方も多かった。
その理由の一つが物心ついた時から叩き込まれた漢文・漢詩でしょうね。江戸時代を通して最新外国文化は中国経由で日本に入ってきたので、知識人にとって漢文・漢詩学習は必須だった。必然的に文学も学ぶことになる。幕末には尊皇思想の盛り上がりで国学を学ぶことも多くなりました。和歌が当然含まれます。当時の教育方法は徹底した暗記。まず覚えてから意味の講釈が始まる。考える前に覚える、手を動かす教育法は書く際にも影響しています。明治の文化人の精力的活動の大きな要因になっています。
■星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第17回)縦書版■
■星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第17回)横書版■
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