星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第13回)をアップしましたぁ。『源氏物語』は歌物語でもあります。口説く、愛する、喧嘩する、別れるにしても歌(和歌)が詠まれます。男女が歌で本当に言いたいことを言い合う。しかし現実は微妙に歌を外れた方向に動いてゆく。それが物語です。
歌物語は『伊勢物語』から始まったと言っていいでしょうね。主人公は在原業平に擬してありますが業平周辺で作られた物語だと考えられます。『伊勢』は歌から物語を作り出した初めての作品です。つまり日本的な物語(小説)は歌(和歌)から始まった。『伊勢』では物語部分がほんの数行という場合もありますが、『源氏』は現代小説と同じく登場人物を設定して歌を詠ませ歌によって物語を転調させている。ただ歌が物語の原動力であるのは変わりません。
で、「雨夜の品定め」は禅問答のようになって来ました。「ではどんな女を選べばいい。数多ある女から選び取ることの難しさに面食らうのは万人の宿命とも言える。それでも吾等(おとこ)は望み通りの女を探すべきものだろうか。血眼になって美の権化、吉祥天女を探し求めるべきか。そんなのは叶うはずもない、迷信さ」とあります。理想の男女関係(恋愛)は不可能、しかし、という現実に光源氏が設定され、彼の後継者たちの更に現実に振り回され、光源氏より遙かに現実を遊離した言動が描かれます。
■星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第13回)縦書版■
■星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第13回)横書版■
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