第8回金魚屋新人賞受賞の松岡里奈さんの小説『スーパーヒーローズ』第10回をアップしましたぁ。うーん今回の連載分は美しいですね。作家の思想と小説の書き方が完全に合致しているような印象です。
失わないとならない。この希望の残骸を、失う必要がある。わたしはここに属していない。頭のてっぺんからつま先まで、どこもここには属していない。
私はこの世の楽園にいた。この楽園の中には世にも美しい男の子がいた。楽園にいた私は幸せなどではなかった。
体に大きく穴が開いていた。傷ではない、穴だ。昔は傷であり、それらしく痛んだが、今はただの巨大な穴だ。私はこれが埋まらないことを知っている。たとえ何人の男がペニスを入れたとしてもだ。
松岡里奈さ『スーパーヒーローズ』
ガキじゃあるまいしペニスに反応してしまう読者はいないと思いますが、肉体的思想がなければ書けない文章であるのは確かです。小説ではしばしば「文体がいい」と言ったりしますが石川は懐疑的です。作家の強靱な思想に裏付けられない文体などあるわけがない。文体が美しいのは作家の思想が研ぎ澄まされていて美しいからです。げんに美しい文体にルールなどない。松岡さんの文体、美しいです。
■ 松岡里奈 連載小説『スーパーヒーローズ』(第10回)縦書版 ■
■ 松岡里奈 連載小説『スーパーヒーローズ』(第10回)横書版 ■
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