小原眞紀子さんの連作詩篇『Currency』『軀』(第05回)をアップしましたぁ。
そう、それは
いつもふと起きる
幼な子のあくびのように
機嫌が悪くて
いやいやする
何を見ても
たった一つの
好きな人形のほかは
生まれる前に
青い紐で結ばれたもののほかは
あなたは手繰り寄せる
今はまだ灰色の
あなたの軀を
光る敷布が盛り上がる
海辺のように
(小原眞紀子『軀』)
『Currency』には現在と現行通貨の2つの意味があるわけですが、この連作詩篇では濃厚に〝世界視線〟が表現されています。現代を相対化して捉えようとする詩人の視点です。こういった高みでもあり、フラットでもある作家の視線は重要だと思います。
金魚屋ではもっと詩に力を入れたいのですが、それには新たな認識を持った詩人たちが必要です。短歌の世界は世代交代を含め作品更新もうまくいっていると思いますが、俳句と自由詩の世界はちょっと停滞気味です。自由詩に話を限れば、やはり詩人たちを結びつけるパラダイム的共通事項が欠けています。
詩人はもちろん好き勝手に作品を書いていいわけですが、最低限の〝現代を捉えるための共通認識とその手法〟の了解が必要です。かつてはそれは戦後詩であり現代詩であったわけです。しかし戦後詩と現代詩のパラダイムは霧散しました。未来に向けた新たなパラダイムを構築しなければならない時期にさしかかっています。
作品を社会に向けて発表し、不特定多数の読者に受け入れてもらう、広く読んでもらうためには、作家に最低限の〝公的な意識〟が必要です。自由詩の詩人なら、自由詩の未来に繋がるような仕事をしなければならない面があります。そういった意識が多少でも強くなれば、詩の新たなパラダイムは自ずと形成されてゆくと思うのです。
■ 小原眞紀子 連作詩篇『Currency』『軀』(第05回)縦書版 ■
■ 小原眞紀子 連作詩篇『Currency』『軀』(第05回)横書版 ■
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