第2回 辻原登奨励小説賞受賞作家・寅間心閑(とらま しんかん)さんの連載小説『証拠物件』(第11回)をアップしましたぁ。五章下編です。いよいよ大団円が近づいてまいりました。心理モノの一人称一視点小説なんですが、動きがある。このくらいディープな心理小説になると、動的な感じがなくなりがちなんですけどね。主人公コウタの、ちょいとヤンキーっぽい繊細な乱暴さが利いているのかな(爆)。
「……俺と、付き合ってくれませんか」
タイミングを間違ったかもしれない。ふと、働いているキャバクラの場所もまだ知らないんだよなと思う。テレビに映っている映画は昔のものなんだろうか、ドレスを着た金髪の女が、古めかしい電話機のダイヤルを回している。
「私なんかでいいの? 年上だよ」
耳元で囁く声。はい、と答える。いいも悪いもあるもんか。
サキエさんの腕に力が入る。交渉成立、だ。素直に嬉しい気持ちはもちろんあるが、もう一つの気持ちが血管に流れこんでいく。
――人質。
そう、サキエさんは人質だ。
ボス、逃げようったってそうはいかないぜ、こっちには人質がいるんだ。
(寅間心閑『証拠物件』)
『テレビに映っている映画は昔のものなんだろうか、ドレスを着た金髪の女が、古めかしい電話機のダイヤルを回している。』はいいですねぇ。無意識的作家の記述なんですが、いい作品には必ずこういったスリップがある。石川、寅間さんという作家にじょじょに焦点が合ってきたように思います。あと一歩だなぁ。あ、そりは石川の勘次第なんですけんど(爆)。
■ 第04回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
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