鶴山裕司さんの連載歴史小説『好色』(第10回)をアップしましたぁ。『好色』も大詰めに近づいています。それにしてもお千さん、気丈でこわひ女性でありまふ(爆)。
お千の目の中で湯島の坂が大きく膨らんで、崩れ落ちた。昨夜は一滴も流れなかった涙がとめどもなく目から溢れた。すれ違う人たちが驚いた顔でお千を見た。
涙を拭うこともせずに、お千は激しくしゃくり上げながら早足に歩き続けた。「あうっ、あうっ」と言葉にならない声が洩れた。息が苦しかった。新石町に着いた頃にはもうすっかり日が暮れていた。
お千は真志屋の店先から洩れる灯りを見た。しばらく立ったまま乱れに乱れた息を整えた。急速に目から涙が消えていった。後に残ったのは怒りだけだった。
お千は鬼の形相で真志屋の店先に飛び込んだ。
「大旦那はお帰りかい!」
お千は大音声で叫んだ。箒を手にした佐喜が大きく目を見開いて、「はいいいっ、お戻りでっ!」と悲鳴のような声をあげた。
(鶴山裕司『好色』)
ううっ、この後どんな修羅場が繰り広げられるのでせう。詳しくは本文をチェキラッ!であります。そりにしても、歴史小説とはいえ鶴山さんの作品は絵が浮かびます。ビジュアリスティックな作品になっておりますぅ。
■ 鶴山裕司 連載歴史小説『好色』(第10回) pdf版 ■
■ 鶴山裕司 連載歴史小説『好色』(第10回) テキスト版 ■
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