お待ちかね、小説ジャンル越境作家、仙田学さんの新連載小説『ツルツルちゃん 2』(第08回)をアップしましたぁ。仙田さんには先日の文学金魚大学校で女装パフォーマンスをしていただき、西紀貫之さんと対談形式のお話しをしていただきました。深謝です。んで今回は『第三章 Gよりコンパクト(下)』でイケチン君、錯乱の巻です。
「な、ないないない、どこいったうおおおおおおっっっ!!」
「おまえの大事な鏡なら見つかったぞ」
「どこだどこだっ?!」
池王子は血走ったままの目を四方八方へ走らせる。
「きょ教室の、床に落ちてた」
「うお―――――っっっ!! あんなとこまで戻ってられるかぁ!! 鏡、鏡、鏡―――っっっっっ!!!」
「落ち着け。ここは男子トイレだ。鏡なら腐るほどある」
ごくり、と唾を飲み、池王子は恐る恐るあたりを見まわした。
おれの腕を掴む手に力がこもる。
「なあ……頼む。おれのこと、見ててくれないか?」
いつも酷薄そうに歪められている唇は、力なく半開きになっている。
生まれたての子馬のように、池王子は脚を震わせながら、洗面台の前までよろめいていった。
(仙田学『ツルツルちゃん 2』)
妙な言い方ですが、完璧な人間が一人も出て来ないところが『ツルツルちゃん 2』の魅力ですね。イケチン君は鏡の中の自己の他者的イメージにとらわれていますな。んで主人公の映一君は負の中心で、カメラのように彼の周囲の同級生たちの言動を文字通り映し出すわけですが、カメラは深く考えず、いわばフィルムの中である関係性と感情の交錯があらわになる。ぐるぐる小説でありますぅ。
■ 仙田学 連載小説 『ツルツルちゃん 2』(第08回) pdf版 ■
■ 仙田学 連載小説 『ツルツルちゃん 2』(第08回) テキスト版 ■
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■