小原眞紀子さんのBOOKレビュー『絵のある本のはなし』『No.035 あかるい箱 江國香織著 イラスト・宇野亞喜良』をアップしましたぁ。江國香織さんと昨日インタビューをアップした宇野亞喜良さんによるファンタジー絵本です。小原さんは「宇野亜喜良のイラストは、この既視感のある甘美を描き尽くしている。リリコの繊細で劇的な美しさはまさに宇野亜喜良で、しかしさまざまに豊かな想念の数々はまるで私たち自身が描いたもののように素朴なタッチで、まさに私たち自身の夢だ。子供時代には大人になるのを待ちながら、私たちはこういう世界に生きていたと思う」と書いておられます。
主人公の少女は「わたしの天使」からの手紙を待っているのですが、彼女が住むマンションの住人のリリコさんも恋人の帰りを待っています。少女の見る、現実とも幻想ともつかぬマンションのあかるい部屋の中で物語が進行してゆくわけです。これはvery江國さん的設定ですね。江國さんの小説には観念的な極があります。観念でもあり肉体的なものでもある至高の存在が設定され、そこに触れることで物語が終わる。あるいは始まるわけです。その往還のダイナミズムが江國さんの小説を読む最大の快楽であるかもしれません。
詩的な詩というものはあり、詩的な小説や短歌、俳句といったものもあります。でもそれはあくまで詩的な作品なんですね。なんとなくのほんわかとした詩的イメージを喚起している言語的作品でしかないわけです。これが詩になるためには飛躍が必要です。作品が詩になるためには強い観念が必要です。明確な世界観を支える観念が軸になっていないと詩は成立しないと言ってもいいかもしれません。江國さんは優れた小説家ですが、実は多くの詩人すら持っていない強い観念に支えられた世界観をお持ちの真性の詩人でもあります。
■ 小原眞紀子 BOOKレビュー 『絵のある本のはなし』『No.035 あかるい箱 江國香織著 イラスト・宇野亞喜良』 ■