池田浩さんの文芸誌時評 『 No.004 S-Fマガジン 2012年10月号 』 をアップしましたぁ。レイ・ブラッドベリの追悼特集です。表紙にはブラッドベリさんの顔が大きく印刷されています。また一人文学界の大物がこの世を去ってしまいました。さみしいことです。
SF というジャンルは、探偵小説 (推理小説) と同様に 19 世紀の末に誕生したわけですが、それを本当の意味で支えたのは 20 世紀の中頃から本格的に活躍し始めた作家たちです。僕たちは 21 世紀の初頭に生きていて、つまりは 20 世紀的な文化の枠組みが崩壊し、まだ21世紀的な文化の枠組みがはっきりとは見えない過渡期の時代に生きています。ブラッドベリのような大物が死去するとそれを痛感します。アシモフ、クラーク、K ・ディック、レム、ハインライン、それにブラッドベリらの世代が本当に新しい SF というジャンルを作り上げたわけです。
最近、ジャンルの寿命って、意外と短いんじゃないかと思うことがあります。SFに限らないですが、各ジャンルには青春期があり、そこで 「初めての仕事」 をした作家だけが、優れた創作者として後世にまで記憶されているような気がします。戦後作家の仕事がどんどん忘れ去られているのに、夏目漱石の仕事がいつまでも古びないのと一緒ですね。多くの場合、青春期を過ぎたジャンルに現れた作家は、多かれ少なかれ草創期の作家の仕事を焼き直し、洗練させているだけのような気がします。
要するに真に新しい仕事を始めなければ、文化は本当の意味で先に進まないわけです。作家さんそれぞれのやり方はあるでしょうが、文学金魚が目指すのは真に新しい創作活動の拠点であります。終わってしまった文化の枠組みにしがみつくのは無駄ですし、終わりかけている文化の枠組みにしがみつくのも結局は無意味だと思います。ちっこい拠点であろうと新しいメディアのスタッフの一人として、金魚にエサをやり続けて太らせる方が僕は楽しいのでありますぅ~。
■『 No.004 S-Fマガジン 2012年10月号 』 URL■