一.フラックス・オブ・ピンク・インディアンズ

法事の為に帰省した。約一年ぶり。今回は日程調整に手こずり航空券が少々高額に。色々足掻いた結果、安くならないことは決定。ならばといつもの福岡空港ではなく北九州空港をチョイス。昼前に到着/夕方前には移動、と時間はないが小倉で呑みたかった。予想外の雨ということもあり、アーケード商店街を冷やかしながら駅前の京町エリアへ。よく「ディープ」と称されるこの一帯には、九州唯一のストリップ劇場&ゲイ映画専門館があり雰囲気抜群。今回明るい時間帯に訪れて、夜より昼間の方が凄味アリと感じた。闇で誤魔化さない「秘めごと」からは、あやしさだけが匂いたつ。噎せ返りながらお目当ての居酒屋「H」へ。此方は24時間営業(!)、セルフで注ぐビールが100円(!)、お通し無料(!)の優良店。開け放しのドアから入る自然光に溢れた店内は、どこか霧がかっていて本当に素晴らしい。カウンターでお通しのキムチをいただきながら、この明るさがもたらす効果を考えてみたが難しい。どうにか浮かんだのは、スイカにかける塩、もしくは塩キャラメル。違いはしないが浅すぎた。
ロックの中でもパンク、パンクの中でも「アナーキズム」と「DIY(=Do It Yourself)」を標榜するアナーコ・パンクの特徴は、具体的かつ多岐にわたる反体制のメッセージ。特に動物愛護と反キリスト教に関するものは十代の未熟な耳を強く刺激してくれた。まあ「刺激」なんて言うと、そのメッセージに感銘を受けたみたいだがサニアラズ。なるほどと感心はしたが、それ以上に「あやしさ」を強く感知し、結果的に距離を取りつつ覗き見る「怖いもの見たさ」状態に。その状態は今も変わらない。あやしいもの、見たいよね。無論、主張の内容にアレコレ言いたいわけではない。ボロボロの格好をしたパンクスが深遠な問題に取り組む、その一見アンバランスな姿がただただ興味深い。そう、ゾクゾクしちゃう。代表格となるバンドはクラス。パンク史の表面がピストルズなら裏面は彼等。所謂パンク・ロックの定型には収まらない楽曲も魅力だが、最大の功績は自主レーベル「クラス・レコード」の設立/運営だろう。自分たちだけでなく志を共にするバンドの作品も数多くリリースし、今回紹介するフラックス・オブ・ピンク・インディアンズもその系譜。彼等の場合、「あやしさ」という切り口ならセカンドアルバム『The Fucking Cunts Treat Us Like Pricks』(’84)に尽きる。御覧の通りタイトルから放送禁止確定で、モロ出しのジャケット画も完璧アウト。結局、販売していたレコード店を警察が家宅捜索する騒ぎに発展。フォークランド紛争、性暴力、国家の洗脳等々を訴えるメッセージはどこか偏執的で自家中毒をも連想させる。つまりドロドロ。掌で両目を覆いつつ、指の間からこっそり見たいよね。
【 Very Funny / FLUX OF PINK INDIANS 】
二.中川イサト

小倉からの移動手段は新幹線。15分だけ乗って隣の博多駅まで。たった一駅なのにパンタグラフの点検で20分程遅延。ゲンナリしつつも、そのおかげで立ち寄れそうな角打ちを思い出す。赤坂の酒店「C」は、朝から呑めるだけでなく中休みアリ。夕方前の店内は健康的に明るく、その中でタバコ片手に向かい合う背広姿の先輩二名はややアンバランス。でもこの明るさこそが「ハレとケ」のケ、つまり日常であるという何よりの証し。それは夜、渡辺通の酒店「H」を訪れた際にも感じた。明るい店内には上司に連れられた若者が多く、「飲みニケーション」という死語が浮かぶ。え、私? 地酒を飲み比べて良い加減になり、すっかり訛りきっておりました。アンタこがん店の近所にあったらくさ、槍の降りよう日でも通うてしまうばい。
日常である、ということは言い換えれば「馴染んでいる」し「溶け込んでいる」。音楽でいえば作業中にボリュームを絞って流すあの感じ。元々集中したい時にはインスト曲をかける。言語はどうあれ歌声は意識が持っていかれるし、できれば旋律も曖昧な方がいい。最近静かな音量でかけるのは、指弾きギタリスト、中川イサトのアルバム『Sayonara』(’91)。インスト曲メインの構成だが内容は充実。空気にも程良く溶け込むし、集中してイヤフォンで聴いても飽きが来ない。彼が在籍したグループ「五つの赤い風船」は何枚か聴いているが、所謂関西フォークシーンには疎く、ソロ作と向き合うのはほぼ初めてかも。既に聴きたいアルバムを数枚チェック済み。
【 Lefty 25 / 中川イサト】
三.プロコル・ハルム

今回の宿は前回の帰省時に痺れた酒屋、大濠公園「H」から徒歩1分のホテルにした。そう、どうしても行きたかった。チェックインして汗を流し、外出したタイミングでちらりと覗くと大盛況。仕事帰りの客が十名弱。ザッツ・飲みニケーション。前回の沈み込むような静けさとは真逆だが、覗くだけならそれもまたいい。他の店を巡って時間を潰してから再トライすると、さっきまでの賑わいが嘘のように人がいない。前回と同じく白いワイシャツ姿のマスターに、すぐ隣に宿を取ったと伝えると「あそこは昔、呉服屋さんでね」と渋い話をしていただけた。明るすぎない照明のもと、缶チューハイ200円の贅沢を噛みしめる。
マスターとの会話が途切れても贅沢な時間は流れ続ける。脳内BGMはプロコル・ハルム。ちょうど前日にムッシュかまやつの自伝『ムッシュ!』(‘02)を読み、好みだという曲をチェックしたばかりだった。代表曲は言わずと知れたデビュー曲「青い影」(‘67)だが、ムッシュのオススメは次のシングル「ハンバーグ」(‘67)。メジャーロードをあえて避け続けた彼らしいチョイス。プログレ、クラシカル等、様々な呼び名が似合うバンドだが、初期のアルバムは名曲「青い影」のあの霧がかったイメージで統一されている。また次回の宿も元呉服屋だな、と密かに決めつつお会計。ちなみに「ハンバーグ」は当時の誤訳、というより誤読。正解は「ホンバーグ」。肉料理ではなくドイツの帽子のこと。
【 Homburg / Procol Harum 】
寅間心閑
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