寅間心閑 連載小説『ど、泥卍』(第03回)をアップしましたぁ。京都行きをやめた男が向かった先は、朝から開いている馴染みの居酒屋「しんきち」。知り合いのない場所に逃げようとした男は日常に帰ってくる。もし京都に行ったとしても結局は同じこと。人間の生活圏は狭く、どこにも逃げようがない。
馴染みの居酒屋で甦ってくるのは過去の記憶ばかり。読者には未知だった男の来歴でもあります。調理師学校でも、アルバイト先でも腕のいい料理人だった。心配して、助けてくれる稲垣さんという先輩もいる。しかし「鬱陶しい」とも感じてしまう。失意の男の正直な感情でしょうね。彼の心の傷は誰も癒やせない。
過去の記憶で最も男の心を傷つけるのは、琴絵との関係。売り上げ悪化と琴絵への暴力が重なったまま思い出されます。陰惨な記憶のはずなのに影絵のように静か。琴絵が男の暴力を吸い込んでしまうから。「ごめんね」という琴絵の言葉は怖いですね。それは「読経」と表現されている泥卍、という言葉がじわじわと意味を帯びてくる回です。
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