小原眞紀子『文学金魚らじお Web3.0時代のコミュニティ(22)観客席で観たいもの―ブラックボックスダイアリーズ』をアップしましたぁ。今回はジャーナリストの伊藤詩織さんによる初の長編監督作品『ブラックボックスダイアリーズ』についてです。第20回チューリッヒ映画祭でドキュメンタリー賞と観客賞を受賞し第97回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされました。
伊藤さんはレイプ被害にあって加害者を告発しました。逮捕はなぜか直前に中止され、これについてはトップからの圧力と言われています。司法が機能していない、というのはそのことです。しかし伊藤さんは屈しなかった。
小原さんはその最大の理由を「納得がいかないから」だとおっしゃっています。単純なようですがそれは人間思想の原理です。伊藤さんは「政権批判をするつもりはない」「加害者のことすらもうどうでもいい」とおっしゃっている。では何に最も納得がいかないのか。「司法がちゃんと機能していない」ことです。レイプ事件の構図は動かない。司法がちゃんと機能していなければ社会不安につながる。この納得のいかなさを小原さんは肉体的思想として捉えておられます。
今はSNSで簡単に意見を発信できます。しかし社会問題に向きあったり巻き込まれてしまったら10年くらいはそれにかかりきりになってしまう。人間の一生分の時間がかかることも珍しくありません。そして結果はほぼ間違いなく自分が望んだ通りにはならない。ではなぜ戦うのか。どうしても、どうしても納得できないからですね。これは社会問題だけの肉体的思想ではありません。文学でも同じです。どうしても納得できない人だけが肉体的思想を持ち戦い書き続けてゆけるのです。
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