星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第16回)をアップしましたぁ。「帚木」の帖の名前の由来が明らかになる部分に入りました。『源氏物語』は言うまでもなく歌物語です。光源氏と姫君たちが詠み交わす歌によって帖名が付けられている。歌が物語の母胎になっています。
国によって文学の発生形態は違います。戦後の1980年代頃まで日本に叙事詩はあるのか、抒情詩だけなのか、といった議論がうっすらと残っていました。ヨーロッパ文学史観による文学理解が残存していた。しかしよーく考えてみなくても、そんな対比は無意味です。日本文学の発生は和歌(短歌)にあります。短歌から物語(小説)、謡曲(歌謡)、俳諧(俳句)が生まれた。わずか31文字の和歌がすべての日本文学の母胎です。
短歌が日本文学の母胎であることは、現代文学に至るまでその影響を維持し続けています。島崎藤村から志賀直哉に至る日本自然主義文学は、欧米自然主義小説との比較で考えるより、短歌との類比で考えた方が遙かに理解しやすい。まず日本文学とはなにかを考え詰めなければ外国文学との比較は無意味。『伊勢物語』から『源氏物語』に至る古典文学に日本の物語(小説)文学のエッセンスがあります。
■星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第16回)縦書版■
■星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第16回)横書版■
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