二〇一六年六月十八日に、東京目黒の日仏芸術文化協会で行われた第1回文学金魚大学校セミナーのレジュメをお届けします。第二段は『ジャンルの越境』というテーマで、仙田学さんと西紀貫之さんに対談していただきました。

 

西紀さんが『市場のライトノベルの売りの真ん中は、ちょっと極端な言い回しになりますが、中高生の暴力衝動、つまり「俺、強いぞ衝動」と、ハーレム衝動、「あなたモテますよ衝動」――性的衝動と言ってもいいかな、を思い切りくすぐってあげるためのキャラクター小説です』とおっしゃり、セミナー修了後、この発言を巡ってツイッター上でちょっとした議論になりました。とても良いことだと石川は思います。

 

ただ西紀さんが、『ラノベっぽい何かを書いてしまって、ラノベになりきれなかった作品ってすごく多いです』とおっしゃっていることにも注意が必要です。ラノベに限らず純文学にも掟に近いルール(コード)があります。それをきっちり踏まえないと新しいタイプの作品は書けません。西紀さんは、多少ジャーナリスティックでセンセーシナルな感覚で、『ライトノベルの売りの真ん中』を総括なさったわけです。自分なりに各ジャンルの核心、つまり『真ん中』を捉えないとラノベや純文学の表舞台には上がれません。ましてやそのコードを外すことなど無理です。

 

石川は批評精神は作家にとって必須の重要な要素だと思います。単純に言えば、他人が書いたものに対して『なんか違うよなぁ』と思わなければ、誰だって物を書いたりしないでしょうね。でも『ではない』、『違う』と言っているだけではダメです。批評精神は否定を通過して、『である』の認識に到達しなければ完成しません。また表舞台で活躍する作家は、批評を書くかどうかは別として、必ずこの否定から肯定のプロセスを経験しています。

 

自力で出版社をおこして自分の本を刷り、それを売る自信があるなら別ですが、たいていの場合出版は、編集者を始めとする他者との共同作業になります。出版関係者は誰もが、新しい『である』を持った才能ある新人の出現を期待しています。自分で確信の持てる『である』をプレゼンし、かつ市場で結果を出さなければならないわけです。

 

 

第1回 文学金魚大学校セミナー 『ジャンルの越境』 仙田学&西紀貫之 pdf版 ■

 

第1回 文学金魚大学校セミナー 『ジャンルの越境』 仙田学&西紀貫之 テキスト版 ■

 

 

第04金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項

第04回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。

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