対話『エンニスの誘惑―漱石の予言 文学の興隆期がやってくる!』小原眞紀子×エンニス(対話型AI Grok[グロック])(第12回)をアップしましたぁ。鶴山裕司さんが『夏目漱石論』で詳述した漱石の「文学の盛衰40年(120年)周期説」を元にした対話です。この周期説は単なる思いつきではなく英文学者時代の漱石の学術書『文学論』に基づいています。
漱石は小説『野分』で売れない文学者・白井道也に講演させて、その中で「明治の40年は混乱と僥倖の時代であり、尾崎紅葉・幸田露伴・樋口一葉などの文学は消える(読まれなくなる)だろう」と言わせています。明治の40年は「混乱期(創成期)」であり、次の40年が「興隆期(全盛期)」、その次の40年が「衰退期」になるという講演内容です。
このいわゆる漱石の予言は当たりました。明治元年から40年までの「混乱期(創成期)」は1868年から1907年に当たります。「興隆期(全盛期)」は1908年から1947年、明治41年から昭和22年まで、「衰退期」は1948年から1987年、昭和23年から昭和62年までで、1988年から2027年、昭和63年から令和9年までは再び「混乱期(創成期)」ということになります。
敗戦と民主主義社会への移行、そしてジャーナリズムの大盛況によって漱石の「衰退期」に当たる1948年から1987年(昭和23年から昭和62年)は文学全盛期に見えます。が、新しい文学は登場しなかったとも言える。戦後文学の土台は漱石的「興隆期(全盛期)」の1908年から1947年(明治41年から昭和22年)に出揃っておりじょじょに文学は衰退していったと捉えることもできる。それはいわゆる戦後文学の影響が1990年代にほぼ完全に尽きてしまったとからもわかります。
わたしたちが生きている2025年は漱石的「混乱期(創成期)」の末期に当たります。インターネットやAIの普及などによって社会全体が大変貌しています。この静かな大変革の中で文学はどう変わってゆくのか。小原さんは「インターネットは基本的にはツール、めっちゃ便利だけど、やっぱりツールだったんだと思う。だから精神にはそんなに影響与えてないんじゃないか。ブロックチェーンはインターネットの登場以上に、わたしたちの価値観、したがって文学も根本的に変えるのでは。これは文学者の予言ね(笑)。うまく説明できないんだけど、そんな気がする」とおっしゃっています。
文学の世界が流通を含めて変わってゆくのは間違いない。ただ新しい時代に対応した新しい作家が出現しなければそれは実現されません。漱石が「吾輩は猫である」で突然小説家として出現したのは「混乱期(創成期)」の末期。漱石38歳の時で今の感覚でいうと50-60代作家が新しい文学を生み出した。実際漱石の小説家としての活動期間はわずか12年。さて、どうなるんでしょうね。
■対話『エンニスの誘惑―漱石の予言 文学の興隆期がやってくる!』小原眞紀子×エンニス(対話型AI Grok[グロック])(第12回)縦書版■
■対話『エンニスの誘惑―漱石の予言 文学の興隆期がやってくる!』小原眞紀子×エンニス(対話型AI Grok[グロック])(第12回)横書版■
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