NHKスペシャル 未解決事件

NHK総合

不定期

 

テレビバラエティ批評_049_01

 

 

 オウム真理教に関する過去のシリーズの再放送、新たな番組が話題になっている。「未解決事件」と呼ばれるものの多くは真犯人がわからない、もしくは犯人が捕まっていない。オウム真理教については、それが未解決である、というのは、犯人うんぬんということとは違っている。もちろん国松長官狙撃など真相が不明、また長く行方を追われていた者もいたが、その謎は事実を解明するだけでは済まされない。

 

 その意味で、オウム真理教についてはいわば永遠の未解決事件に近いもので、他の事件とは質が異なる気がする。ただ本当のところ、どんな事件だって当事者にとっては、犯人が捕まったからすべて解決というものではないはずだ。オウム真理教だけが「事件」とすら呼ばれず、その傷は癒えず、謎はいつまでもくすぶっているように見えるのは、我々のすべてがその当事者だったからではないか。

 

 それは驚くべき出来事だった。長い年月に渡って偶然もはたらき、また日本のシステムの多くの要素が重なり合い、醸されるようにして出来上ってきた、という意味においては確かに全体としては「事件」と呼べないかもしれない。それは日本そのものの裏返しとして巨大化した病巣だった。

 

 豊かな日本で育った善良な、そして多くは優秀な若者たちがそこへ取り込まれていったことが最大の謎であった。特に首都圏の人々にとって、彼らは文字通り友人、知人であったり、その息子であったりした。信者の誰かと袖すり合い、すれ違っていた。まさにそれは日常の延長だったのだ。

 

 NHKスペシャルではその肥大化してゆく過程、どうしてそんなことになったのか、なぜ止められなかったのか、という点を追ってきた。実際、その組織は日本の権力組織をなぞり、その間隙を突いたのだが、すべてが計算づくであったわけではない。しかし無謀な欲望と計画が実現してしまったのは、偶然ばかりでもなかった。

 

 坂本弁護士一家が行方不明となり、それにオウム真理教が関わっていることは素人目からも明らかで、神奈川県警が捜査を進めていたというのだが、マスコミはオウムに迎合し、ほとんど野放しにされているとしか見えなかった。熊本での強制捜査の情報が漏れていたために武装化を把握できなかったと言うが、松本サリン事件の犯人がオウム真理教だ、という噂は地下鉄サリン事件の前から巷に流れていた。

 

捜査内容もまた漏れていたのか、あるいは世間の常識からして松本サリンのような無意味で大掛かりな犯罪の犯人は、弁護士一家を拉致するような凶暴な、しかもそれを野放しにされて増長した団体しかあり得ない、と推測されていたのかは不明だ。それでも素人がとうに感じていた危惧なのに、警察が惜しくも遅きに失したといったストーリーは信じがたい。「宿命」といった関係者の言葉を滑り込ませる述懐も。

 

 宗教団体への弾圧と言われることへの尻込み、縛りが不幸を生んだことは確かではある。カルトと呼ばれる集団に対する経験の不足も。ただ、変だ、おかしいと思いながらも関係性に組み込まれれば上からの指示に従うしかない構造は、警察もカルトも同じ日本の組織だと思うしかないのだろうか。

田山了一

 

 

 

 

 

 

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