夢枕獏
日本を代表するベストセラー作家。一九五一年、神奈川県小田原市生まれ。七七年、筒井康隆氏が主宰する同人誌『ネオ・ヌル』にタイポグラフィック作品『カエルの死』を発表。『奇想天外』八月号に転載され、デビュー。小説デビューは『奇想天外』同年十月号に掲載された『巨人伝』(後に『はるかなる巨人』と改題)。八九年『上弦の月を喰べる獅子』で、第十回日本SF大賞および第二十一回星雲賞(日本長編部門)、九八年『神々の山嶺』で第十一回柴田錬三郎賞を受賞。今年度は『大江戸釣客伝』で第四十六回吉川英治文学賞、第三十九回泉鏡花文学賞、第五回舟橋聖一文学賞で三冠を達成。日本SF作家クラブ会員。
エンケンのハモニカ
夢枕獏
エンケンから
もらったハモニカ
ふいたよ
そっと
しずかに
しずかに
ふいたよ
心がほどけて
出てきたような
宇宙がほどけて
おりてきたような
生まれたばかりの音のこえ
扉がひらいた隙き間から
ちいさな光のひとしずく
そろりそろりと
プップカプー
まあたらしく息をすい
も少し大きく
プップカプー
もっと大きく
プップップー
淋しいときに
プップカプー
苦しいときに
プップップー
ハモニカ押さえた指先が
音といっしょに震えてる
揺れてる心そのままに
愛におろかなつみびとも
道にたおれたたびびとも
哀しいときの
天のこえ
元気だせ
生きろ
プップカプー
元気だせ
生きろ
プップップー
元気だせ
生きろ
プップカプー
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■ 予測できない天災に備えておきませうね ■