小原眞紀子さんのBOOKレビュー『絵のある本のはなし』『No.040 はてしない物語(岩波少年文庫版) ミヒャエル・エンデ著』をアップしましたぁ。小原さんは『実は、ミヒャエル・エンデという作家があまり好きではない。ならば取り上げなければよいようなものだが、現代において、わりかし重要な作家ではないか、とは思う。頭でそうは思っても、いまひとつ評価を高めようという気にならない。それはなぜか、ということに関心はある』と書いておられます。まーある作品や作家の好き嫌いはどなたにでもあることですが、小原さんは面白い指摘をされています。
小原さんは、『エンデの情熱は・・・ある典型としてのファンタジーに古今東西の思想を反映させることにあり、現代の思潮であるポスト・モダンを書物 = メタ書物という形態で提示することにあると思える。・・・そのわくわく感にしかし、強く疑問を感じざるを得なかったのは、『はてしない物語』の文庫版を見たときである』と批評しておられます。
初版でお読みになった方は覚えておられるでしょうが、『はてしない物語』は豪華本で二色刷りでした。それが文庫版では踏襲されていないらしひ。『二色刷りが不可能な文庫版ではどうなっているかというと、異界を描いているパラグラフや行の上部の余白に、装飾的な波線が入っている。苦肉の策だが、これはまったく違うことだ。ページ上部の余白を参照するというワンクッションが入れば、幻惑感は消失する。魔法が解けるのだ』と小原さんは書いておられます。
装丁やレイアウトが変わってしまうと、途端に魅力を失ってしまう書物は確かにあります。不肖・石川は凝った豪華本には基本的に反対ですが、それは書物の物理的形態や書体(手書き文字を入れるなど)によって、作品の内容を補強してはならないと思うからです。しかし異様なまでに本に凝った作家の作品が、ある迫力を伝えることもあります。ただそれは、作家の強い思想が造本に投影されている場合に限られます。文学では誤魔化しは結局のところ無駄なのでありまふ。
■ 小原眞紀子 BOOKレビュー 『絵のある本のはなし』『No.040 はてしない物語(岩波少年文庫版) ミヒャエル・エンデ著』 ■