Nobuyoshi Araki, installation view at Taka Ishii Gallery Photography / Film, May 25 – Jun 20, 2015 Photo: Kenji Takahashi
荒木経惟の最新作を集めた展示が5月25日よりタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムで開催中だ。
タカ・イシイギャラリーでの22回目となる本個展では、6×7ポジフィルムによるカラー写真と日付入りのモノクローム写真が展示されている。室内外の風景、萎れかけながらも鮮やかな花、ユーモラスに性的な雰囲気を演出されている静物、人間の生と性と死、東の空など、アラーキーの写真で独特の視点から親しまれるテーマを取り上げる、日記のような写真である。モノクロームの写真に示された日付をよく見てみると、全ては「’15 5 25」の鏡写しである。カラーの写真は日付なしだが、さりげなく文字や文章などが写っており、これらも反転させられた写真であると気づく。今はあの世からこの世を見ている、という荒木氏。向こう側の空のから見た世界は鏡写しである、というのが、氏の75歳誕生日に開かれた本個展のコンセプトである。
Nobuyoshi Araki, installation view at Taka Ishii Gallery Photography / Film, May 25 – Jun 20, 2015 Photo: Kenji Takahashi
毎年5月にタカ・イシイギャラリーで開催される荒木経惟の個展は、オリジナルで非常に私的なコンセプトを軸にする。「左眼ノ恋」という題目で開かれた去年の展示は、撮影したポジフィルムの右部分を黒マジックで塗りつぶしプリントした写真からなっており、右眼の失明が荒木氏の視界にもたらした変化そのものを反映している。2013年の「色(エロ)女(リアル)」展は、フィルム写真でしか表せない「エロリアルさ」に関する荒木氏の強い主張を提示していた。
今回の展覧会にあわせ、展示作品を収めたカタログ『鏡の中のKaoRi 写狂老人A 2015.5.25 75齢 Birthday』も販売中である。
Nobuyoshi Araki, installation view at Taka Ishii Gallery Photography / Film, May 25 – Jun 20, 2015 Photo: Kenji Takahashi
お誕生日会を兼ねた25日のオープニングレセプションは、大勢の友人やファンに囲まれ、楽しく笑いながら写真の話をする精力的な荒木氏の存在感を肌で感じる機会だった。アラーキー展のオープニングに欠かせない友人バンド・ペーソスのユーモアに富んだ歌が雰囲気を盛り上げ、会場がお祝いの気持ちで溢れていた。この日ギャラリーに集まった人々と「写真=人生」という情熱を分かち合った荒木氏は、来年に向けて今日から撮り始めると決意を新たにしていた。
* 本展は6月20日までタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムにて開催される。
ラモーナ ツァラヌ
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■