水野翼さんの文芸誌時評『No.010 小説すばる 2013年11月号』をアップしましたぁ。『作家と万年筆』といふ特集が組まれているやうです。しかも万年筆メーカーとのタイアップ広告としてではなくて(爆)。万年筆や原稿用紙は、いまだに作家的アトモスフィアを強く喚起してくれるグッズなんでしょうかねぇ。もちろん原稿をワープロで書いても万年筆で書いても良いのです。問題は仕上がった作品の質ですから。しかし作家が万年筆で書いていることが注目されるのは、〝手書き〟がその作家の文学と密接な関係を持っていると読み解ける場合だけでしょうね。
不肖・石川の知り合いに、文学者及びその卵さんたちのブログを広範囲に分析している研究者先生がいます。文学者といってもブログが本になる作家は一握りで、たいていは自発的に書きたいことを書いている。ここがミソで、一年、二年と続けていれば、ブログにはまず間違いなくその作家が一番興味を持っている事柄が表現されるらしひ。それを分析していくと、現代文学の潮流が見えてくるといふことであります。
ブログの3大テーマは、やっぱ食事(酒)、ファッション、ペットだそうです。それに仕事、家庭などの要素が入ってくる。研究者先生はそれを縦軸の社会的パラメータにして、横軸に自慢、劣等感、喜び、怒りなどの感情要素を並べて分析していく。そうすると文学者の本質的興味のあり様がわかるみたい。社会的に認められたプロ作家の場合、どの題材でもたいていは怒り、劣等感、逡巡などの要素に落ち着くそうです。中途半端な作家になるほど、〝文学者としての僕ちゃん〟を自慢するブログが増えるみたい。おいしいご飯を食べいい酒を飲んでブランド物に身を包み、素敵なペットを飼っている作家の僕ちゃんを自慢したい文学者がけっこういるらしひ。作品より文学者という幻想の方が大事なんでしょうね。きっと万年筆も、そういった作家の僕ちゃんアイテムに入ってるんだろうなー。
水野さんは『著者の全部が万年筆で書き、データ入稿が不能になれば、どこの編集部も食い詰める。そのような実情、台所事情をおいて、「万年筆」のセレブな文学的アトモスフィアをこれでもかと醸すのは、あのブログ「かなえキッチン」に似ている。しかしそれは別に、非難されることではない。変態的な詐欺ブログの振る舞いは、へたな小説よりよほど面白い』と書いておられます。まったく同感です。事実は小説より奇なりですから、さふいふ変態的文学詐欺ブログ、石川も読んでみたいな。研究者先生に今度教えてもらことにしますですぅ。
■ 水野翼 文芸誌時評『No.010 小説すばる 2013年11月号』 ■