Interview of gold fishes 第10回『辻原登 小説文学を語る(後編)』をアップしましたぁ。読み物として楽しんでいただけるだけでなく、作家志望の皆さんには、小説の発想方法や書き方について、また小説家としての生き方についても参考にしていただけるインタビューだと思います。
辻原さんは『芥川賞受賞後に『森林書』という小説を「文學界」に連載し始めたんですが、連載が終わる頃にこんなことをしていちゃダメだと思った。・・・ちまちまとした純文学を書くために小さい頃から小説家になりたかったわけじゃなくて、自分は鷗外や漱石、尾崎紅葉や泉鏡花、谷崎潤一郎のような作家になりたかったんじゃないのかとね。そのためにはどうしたらいいか。そうだ、新聞連載をしなきゃって考えたんです』と語っておられます。このあたりに辻原登という作家の、特異であり、またとても面白い特徴があるでしょうね。
『ちまちまとした純文学』という言葉に反発を覚えられる方も多いでしょうが、必ずしも純文学を否定なさっているわけではありません。現に辻原さんは自分を純文学作家と規定しておられる。辻原さんが危機感を覚えられたのは、硬直化して力を失いつつある制度化した純文学に対してです。また『新聞連載をしなきゃ』という辻原さんの決意はプラグマティックですが、それはやろうとしてもほとんどの純文学作家ができない試みです。辻原さんは純文学作家から中間・大衆小説に表現の幅を拡げていったのではなく、むしろ元々有していた資質の一部分を純文学の枠組みにはめ込んでデビューした作家だと言っていいと思います。
この作家を正確に読解して評価するのは意外に難しい。金魚屋で辻原論を依頼した皆さんも苦労されているようです。しかし辻原文学には、従来の純文学の前衛・後衛的規範には決して当てはまらない新しさが存在すると思います。パッと目につくような文体や主題的特徴を持つ前衛作家の方が、辻原文学よりも遙かに評価しやすいのです。
なお辻原さんに選考委員をお願いしている第一回文学金魚新人賞の締め切りまで、ちょうど一ヶ月になりました。辻原さんのインタビューをお読みいただければ、文学金魚新人賞がほとんど制約のない賞である理由がおぼろにご理解いただけるのではないかと思います。皆様のご応募をお待ちしております。
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