寅間心閑 連載小説『ど、泥卍』(第08回)をアップしましたぁ。ついに泥卍の登場です。今回の山場は台所です。出刃、菜切り、柳刃、筋引きと並んだ包丁。何を見ても元殺し屋に結びつけてしまう。泥卍の実像がまだ見えていない怖さと、それでも飛び込もうとしている期待の表れですね。
料理の場面には稲垣さんの言葉が生きています。「自分ではやらないことを提供するのがサービス」。チーズやハムを過剰なほど丁寧に盛り付ける主人公は、その言葉を守り続けていてその言葉に守られ続けてもいる。そして泥卍は「合格」とは言わない。「明日から来てもらえるかな?」と箸を置く。日給一万円は、予想外で予想以上のものを望んでいるからこその値段だと主人公が悟り、「任すよ、君の管轄だろう」とビールを言いつけられるのを心地よく感じる。「二度と途中で引き返したりするもんか」と誓う姿には、停滞を抜け出したい切実さが改めて表れています。
終盤、笑い声のよく通る貴美子ママと、まったく声の聞こえない泥卍の対比も印象的です。広い家の掃除も庭の草刈りも、泥卍本人がしているとは思えない。いったい誰が? といった小さな謎も残されました。最後は明日の買い物リストに「ゴム手袋」を書き加える。この生活感のあるひと言が、いよいよ仕事が始まるのだと実感させてくれます。
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