連載評論「創作者のためのサブテキスト」『第三回 澁澤龍彦『ビブリオテカ澁澤龍彦』—偏愛のかたち』/『第四回 マルキ・ド・サド『悪徳の栄え』(澁澤龍彦訳)—美徳の不幸と文学の分際』『第五回 金井美恵子『岸辺のない海』—茫洋とした海、その後で』小原眞紀子をアップしましたぁ。
澁澤龍彦さんはある時代を代表する作家です。博覧強記の博物学者的なお方でした。またサド『悪徳の栄え』などの翻訳者でもあった。晩年には小説もお書きになりました。このうち百科全書的博覧強記と翻訳能力は、急速に過去のものとなりつつあります。多くの情報はネット上に開示されており脳内ストレージよりサーバストレージの方が遙かに容量が大きい。使い方にもよりますが正確な情報も得られます。自動翻訳の精度も非常に上がっている。彫心鏤骨の翻訳といった言い方は死語になるでしょうね。
もちろん澁澤文学を貶めているわけではありません。澁澤さんのような知のあり方はひと時代前の知を代表しており、それは非常に優れた成果を生んでいます。ただ社会状況は大きく変わっています。澁澤さんのような全的な知はいまだ理想ですがそのあり方が変わる。時代の節目にいるわたしたちが、いろいろな意味で参考にできる作家です。
金井美恵子さんがその後の女性作家に甚大な影響を与えたのは言うまでもありません。『愛の生活』はエクリチュール・フェミニンの傑作です。『岸辺のない海』も同様。小原さんは「プロットのはっきりした物語ではない。語り手は日常の風景、記憶の断片、身のまわりの物たちを、その存在を際立たせる独特の文章で語り継いでいく。言葉が次の言葉を呼び、イメージがイメージを呼んで、読者は流れの中に身を浸す。岸辺がどこにも見えない海にわけもわからず漂っていたのだ」と書いておられます。その通りですね。ただ石川、この小説の書き方はあまりお勧めしません。「天才少女と呼ばれた作家」にしか許されないでしょうね。
■連載評論「創作者のためのサブテキスト」『第三回 澁澤龍彦『ビブリオテカ澁澤龍彦』—偏愛のかたち』小原眞紀子■
■連載評論「創作者のためのサブテキスト」『第四回 マルキ・ド・サド『悪徳の栄え』(澁澤龍彦訳)—美徳の不幸と文学の分際』小原眞紀子■
■連載評論「創作者のためのサブテキスト」『第五回 金井美恵子『岸辺のない海』—茫洋とした海、その後で』小原眞紀子■
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