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ピー子 『文學界』2026年11月号、10月7日発売。特集は「作家的散策」。ロング・エッセイが村上春樹「ブルーズをそっと歌って」って、これは見逃せないね。
ヨミ太 村上春樹は1949年生まれの小説家で、『ノルウェイの森』や『海辺のカフカ』で世界的に知られる。ジャズやブルースへの造詣が深く、翻訳家としても活動してきた人だ。今回は音楽を聴くときの「メートル原器」になるビリー・ホリデイの歌をめぐる、二十代の記憶を綴っているらしい。春樹さんのエッセイはいつも、個人的な記憶がふっと文学の入口になるから、楽しみだよ。
ピー子 創作も豪華だ。筒井康隆「帰郷」。人気作家になって二十年ぶりに里帰りした「おれ」を銃声が襲う、破格の復讐譚って書いてある。
ヨミ太 筒井康隆は1934年生まれ、実験的でユーモアたっぷりのSF・メタフィクションの大家。『虚人たち』や『文学部唯野教授』で知られるし、最近も精力的に書いている。故郷と名声のあいだで何が起きるのか、筒井節が炸裂しそう。
ピー子 絲山秋子「お忘れ帳と泉の記憶(神と古代人 3)」、小野正嗣「雪の浜」、草間小鳥子「八月のさざめき」、沓乃よう「指先まで雨が降っている」。顔ぶれが幅広いね。
ヨミ太 絲山秋子は1966年生まれ、『沖で待つ』で芥川賞。日常の裂け目を静かに、でも執拗に描く作風で、この連作も神と古代人をめぐる独特の世界が続いてる。小野正嗣は1970年生まれ、フランス文学者で小説家。『九年前の祈り』で芥川賞を取って、土地や移動、言葉のずれを丁寧に書く人だ。「雪の浜」もその延長線上かも。草間小鳥子は1987年横浜生まれの詩人・作家。母は児童文学の岡田貴久子さんで、詩集も出していてH氏賞候補にもなった。詩的な感性が小説にどう出るか気になる。沓乃ようさんは第131回文學界新人賞の佳作「ドロップ」で注目された新人。農業高校出身で大学院にいるそうで、まだ経歴は浅いけど、新鮮な筆致が期待できる。

ピー子 対談が平野啓一郎×ブレイディみかこ「複雑過ぎる世界で政治はどうあるべきか」。アメリカとイギリス、激動する国家に暮らす両者の目が捉えた最前線、って。
ヨミ太 平野啓一郎は1975年生まれ、『日蝕』で芥川賞、『決壊』や『マチネの終わりに』で知られる。分人主義を提唱したり、社会の複雑さを小説でも論考でも扱ってきた人。ブレイディみかこは1965年福岡生まれ、イギリス在住のライターで、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』がベストセラー。労働や移民、階級の現場を地に足のついた視点で書いてきた。二人の対話は、抽象論に終わらずリアルな手触りがありそうだね。
ピー子 インタビューはバリー・ユアグロー「現実とオーバーラップする米国のユーモア」。取材・構成は新元良一さんで、エッセイ「ユーモアがもたらす連帯感」もついてる。
ヨミ太 バリー・ユアグローは1949年南アフリカ生まれ、十歳でアメリカに移住したショートショートの作家。奇想天外で詩的な超短篇が得意で、柴田元幸さんの翻訳で日本でも親しまれてきた。『一人の男が飛行機から飛び降りる』とか『たちの悪い話』が代表的。ユーモアが現実とどう重なるか、という話は今のアメリカを考える手がかりにもなりそう。
ピー子 特集「作家的散策」のエッセイが続く。山崎ナオコーラのエディンバラ国際ブックフェスティバル・レポート、万城目学「太宰交歓」、戌井昭人「わが町ではない横須賀」、仁科斂「弾痕からアートになる」、櫻木みわ「私はそこにたどりつきたい――奄美群島、その一部」。歩く場所がバラバラで面白い。
ヨミ太 山崎ナオコーラは1978年生まれ、『人のセックスを笑うな』でデビューして、ジェンダーや日常の違和を軽やかに、でも鋭く書く人。ブックフェスのレポートは現場の空気が伝わりそう。万城目学は1976年大阪生まれ、『鴨川ホルモー』で人気になったファンタジー寄りエンタメの書き手。太宰治との交歓って、どんな切り口だろう。戌井昭人は1979年生まれ、『ひっ』で芥川賞。横須賀を舞台にした作品もあるから、「わが町ではない」という距離の取り方が気になる。仁科斂は1994年生まれ、香港・上海・ロンドンで育ってオックスフォード大学PPEを出て、2024年に新潮新人賞、最近は芥川賞候補にもなった若手。弾痕とアートという題は、育ちの国際性と批評眼が混ざりそう。櫻木みわは小説家で、奄美への志向が強い人。土地をたどるエッセイは、特集の「散策」にぴったりだ。
ピー子 ヘミングウェイ『日はまた昇る』刊行百年の批評が菅井大地「癒えない傷を抱えて生きる方法――『日はまた昇る』のダメな人たち」。百年か。
ヨミ太 1926年刊の『日はまた昇る』は、失われた世代の象徴的作品。菅井さんの批評は、傷ついた人たちがどう生きるかを正面から扱っているみたい。春樹さんのブルースの記憶と呼応する部分もあるかもね。
ピー子 連載も充実してる。大澤真幸「AIと人間」第8回、上田岳弘「美しい人」、松浦寿輝「遊歩遊心」第86回、鈴木涼美「小さなひと」、東畑開人「贅沢な悩み」……。図書室は川上弘美『スナックふたり』、鈴木結生『人にはどれほどの本がいるか』、永井玲衣『せんそうって』の書評。
ヨミ太 大澤真幸は社会学者で、理論的な視点からAIと人間の関係を掘り下げている。松浦寿輝は詩人・小説家・批評家。川上弘美は繊細な幻想と日常の書き手、鈴木結生は最近注目の若手、永井玲衣は哲学や対話の人。書評陣もスズキナオ、山本貴光、竹内万里子と読み応えがありそう。
ピー子 村上さんのブルースから、筒井さんの復讐譚、各地を歩く作家たちの足取り、政治の最前線まで。散策といいながら、ずいぶん遠くまで連れて行かれそうな号だね。コーヒー淹れて、ゆっくりページをめくりたい。
ヨミ太 だね。『文學界』はいつも、文学が今どこを歩いているかを、作品と人の両方で見せてくれる。次の散策も楽しみだよ。
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