ずんだもんというキャラクターを初めて見たとき、正直よくわからなかった。YouTubeにやたら出てくる。経済解説にもいるし、歴史解説にもいる。都市伝説にもいるし、企業研究にもいる。最初は全部同じチャンネルなのかと思った。でも違うのである。とうやら、ずんだもんは特定のYouTuberのキャラクターではなく、皆が使える共有キャラクターらしい。なるほど。昔のテレビで言えば司会者、もっと昔なら新聞の4コマ漫画の登場人物みたいなものなのかもしれない。視聴者は細かい説明をされなくても、「ああ、ずんだもんね」と安心して話を聞き始められる。
今回の動画もそんなずんだもん解説動画の一本である。テーマはブックオフの復活劇。メルカリの登場で古本業界が大打撃を受けたのは何となく知っていた。本を売るならブックオフ、と言われても実際にはメルカリの方が高く売れる。本好きであっても、その便利さには抗いにくい。動画もその現実を捉える。なかなか身も蓋もない。
面白いのはそこから先である。普通なら「どうやってメルカリに対抗したのか」という話になりそうなのに、ブックオフはそうしなかった。勝てないものには勝てないと認めた。古本屋であることにこだわるのをやめた。本だけでなく、ゲームも売る。服も売る。家電も売る。リユースショップとして生き残る方向へ舵を切った。その結果、本の売り場も残った。
本を守るためには本にこだわらなければならないと思いがちだ。しかし実際には逆だった。本だけに固執していたら、そもそも店自体がなくなっていたかもしれない。古本文化を守ったのは、古本への執着を少し手放したことだった。なんだか人生訓みたいな話だ。

で、こういう動画を見ていると、ずんだもんというキャラクターの強さもよくわかる。ずんだもんは成長しない。思想も変わらない。いつも「なのだ」と言っている。それが安心なのである。YouTubeという場所では、意外と奥行きや変化が歓迎されないことがある。人はまず「この人はこういう人だ」とわかることを求める。びわ湖くんが何を見てもまず値段を見るように、ずんだもんも何を見てもずんだもんなのである。
考えてみると、キャラクターというのはそういうものかもしれない。文学では人間の変化や矛盾が面白い。でもYouTubeでは、変わらないことが信頼につながる。ずんだもんも、霊夢も、魔理沙も、その意味では子猫動画に近い。別に何か特別なことをしているわけではないのに、いるだけでちょっと見てしまう。かわいいからね。
そしてブックオフもまた、ある意味では似た話かもしれない。本屋であることにこだわりすぎなかったから生き残れた。でも店の中へ入ると、ちゃんと本が並んでいる。変わったようでいて、変わっていない。勝とうとするから負ける。それが印象に残った。結局のところ、長く続くものというのは、案外そういうしたたかさを持っているのだろう。
石川良策
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