星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第19回)をアップしましたぁ。「帚木」の帖は雨夜の品定で女性談義があるわけですが、その実践編として早速光源氏は伊豫介の後妻と契るわけです。しかしその後、文を送っても返事がない。貴公子光源氏はあっさりフラれちゃったわけです。
紫式部という女性が作者ですから、『源氏物語』は男の光源氏を主人公にしていますが実質的に女性百科です。光源氏は理想の貴公子として設定されています。当然ですね。美男子で高位の光源氏は女性にとって非の打ち所のない理想のプリンスです。今のアイドルに近いかな。しかしすべての女性が彼に靡くわけではない。桐壺更衣や伊豫介の後妻だけでなく、ほかにも光源氏に靡かない、あるいは妻になっても心が通わない女性が何人か登場します。
このあたりが『源氏』という長編小説の面白いところです。光源氏は鋭い感覚で女性を観察し理解しようとしますが、それは女性の側も同じこと。光源氏は思いもかけぬ形で女性からしっぺ返しを食らう。伊豫介の後妻は近づけば消えると言われる帚木となり、空蝉となって彼の手の届かない女性になるのです。
■星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第19回)縦書版■
■星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第19回)横書版■
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