性にまつわる全てのイズムを粉砕せよ。真の身体概念と思想の自由な容れものとして我らのセクシュアリティを今、ここに解き放つ!
by 金魚屋編集部
小原眞紀子
詩人、小説家、批評家。慶應義塾大学数理工学科・哲学科卒業。東海大学文芸創作学科非常勤講師。一九六一年生まれ。2001年より「文学とセクシュアリティ」の講義を続ける。著書に詩集『湿気に関する私信』、『水の領分』、『メアリアンとマックイン』、評論集『文学とセクシュアリティ――現代に読む『源氏物語』』、小説に金魚屋ロマンチック・ミステリー第一弾『香獣』がある。
三浦俊彦
美学者、哲学者、小説家。東京大学教授(文学部・人文社会系研究科)。一九五九年長野県生まれ。東京大学美学芸術学専修課程卒。同大学院博士課程(比較文学比較文化専門課程)単位取得満期退学。和洋女子大学教授を経て、現職。著書に『M色のS景』(河出書房新社)『虚構世界の存在論』(勁草書房)『論理パラドクス』(二見書房)『バートランド・ラッセル 反核の論理学者』(学芸みらい社)等多数。文学金魚連載の『偏態パズル』が貴(奇)著として話題になる。
三浦 いや、話題が多いなあ。トランス男性がパートナーと結婚させろって訴訟中ですね。手術要件が今、違憲になってるでしょ。子供なし要件も違憲だって言い始めてるし。だから特例法で設けられている性別変更要件はおそらく全部撤廃されるでしょうね。
小原 それって結局、バイデンから送られてきた米国大使が圧力をかけて。
三浦 理解増進法っていうのは、多様性に関する理解を深めるというだけであって、当事者への共感を深めるという意味はない。最高裁がなぜかそれを曲解して活動家に利用されてしまって、ひどい話ですよ。
小原 文言が抽象的だと、そうなりますね。
三浦 問題は特例法ですよ。性別を変えることができる法律なんか作っちゃったもんだから、但し書きの条件が次々に違憲だということになった。無条件で性別を変えられるようにいずれなるんですよ。そのことをまだわかっていない人たちが、特例法は守るんだと。反トランスの人たちまでもね。
小原 イーロン・マスクが、自分の息子がまだ若いうちに手術を受けてしまって、トランプ支持に宗旨替えしてますね。
三浦 マスク自身が無知だったからね。騙されたような形になった。だってその頃、民主党のリベラルな人間だったはずだから。
小原 アメリカは大統領選で大きく情勢が変わりそうですが、ヨーロッパはどうなんでしょう。パリ五輪の開会式はひどかったみたいですね。
三浦 柔道の六〇キログラム級では誤審があった。やっぱり女性の審判はダメですねって言いたくなった。
小原 数限りない誤審があるみたいで、どれかわかんないです。テレビないし。
三浦 男子の試合で締め技をかけていて、膠着状態だと見て審判が「待て」をしたわけです。普通そこでやめるわけですよ。試合が止まって、時計も止まる。それなのに、聞こえなかったのかわざとなのか、相手選手が締め続けたわけ。で、日本の選手は力を緩めたときに絞められて意識を失った。それで一本、と。審判は普通なら割って入ってやめさせる。それをボーッと見てたわけだ。
小原 それが女性の審判なんですね。反応が鈍いのは女だからですかね。単に技量が未熟なのか。
三浦 国際試合は審判の質が低いのよ、ものすごく。特に柔道は。だから男も女もないんだけどさ。
小原 男同士がこう、組み合っているところに分け入るのが少し引いちゃう、っていうのがあるかもしれない。それが審判としての技量なんだけれども。少なくともすっごい巨漢というか、しっかりした体格の女の人の方がいいんじゃないのかな。
三浦 6秒間も放置してるんだからさ。鈍すぎでしょう。
小原 国際試合の審判の育成がどうなってるのかは問うべき。だけど、わざわざ女を使わなくても、と思いますね。例のシークレットサービスも。
三浦 トランプのあれ、見たでしょ。銃撃の直後に連れられていくとき女性が正面にいて。トランプの身体をとうてい覆えない体格。で、銃をホルダーに入れようとして、何回も入れそこなってるわけ。あのぎごちなさ、やっぱり女性はダメなんじゃないかって映像的な印象がものすごく植え付けられたと思うんだよね。
小原 あの有名になった銃撃直後の写真、ピュリツァー賞間違いなしの。手前の女の人がトランプを覆いきれずにいるのも象徴的だけど、トランプが拳を突き上げている、その後ろのサングラスのイケメンは何なの? カメラ目線で。あの男もよくわかんない。写真の構図としては素晴らしくなったけど、彼を守ることに集中してるわけじゃない、っていう。
バイデンが暗殺を指示して、という陰謀論の証明はなかなか難しいけど、あの警護を見ていると、少なくとも未必の故意の手抜きじゃないか。しかも暗殺されてるのはずっと共和党ばっかりでしょ、ケネディ大統領以外は。
三浦 未必の故意は明らかだと思いますね。大統領選は気になるね、日本の内閣もそれに左右されるから。
小原 カマラ・ハリスは当選しないよ、いくら何でも。
三浦 ただね、アメリカのメディアが一斉にカマラを応援しているので。
小原 そうそう、あれはおかしいよね。
三浦 メディアがとにかく全部、民主党なので。困った話なんだよね。
小原 日本のメディアも、アメリカ帰りのパックンが、さ。もっと知的な人だと思ってたんだけど。
三浦 アメリカはまだディテールが見えるから正確な情報があるんだけど、日本のメディアはさらに歪めて報道する。我々に入ってくる情報は薄っぺらい。
小原 でも、もう信じないよ。ヒラリー・クリントンのときに懲りた。
三浦 総得票数で言えばヒラリーの方が多かったんだよ。選挙人の数で負けただけであってね。
小原 大統領選の勝敗を予想するっていうのは、それも含めてどっちが勝つかってことでしょ。選挙制度は国それぞれで、日本だって選挙区には大とか小とかある。民度の問題もあるし、単なる人気投票にしないことにも意味はある。で、九〇%ヒラリーが勝つって、いったい何だったんだよ。
三浦 今回はまた、わかんないんだよね。
小原 カマラは無理だよ。
三浦 常識に考えるとね、無理だけどね。
小原 無理ったらムリ。
三浦 私が一番起きてほしくないシナリオは、バイデンが十一月までに大統領職を退くっていうこと。それが起こったらハリス大統領が誕生するわけですよ。初の女性大統領が。ところがハリスはまだ選挙で勝ったことがないんですよ。単に繰り上げで女性大統領が生まれましたっていうパターンが一番まずいと思うんだよね。
小原 性別なんかどうでもいい。アメリカ大統領だよ? とにかくカマラはまずいよ。
三浦 どうでもいいんだけど、なんていうのかな、美的な問題があるじゃないですか。
小原 へ? 美的?
三浦 エステティックな問題。
小原 それどころじゃない。カマラには無理。
三浦 アメリカ初の女性大統領がどういうプロセスで生まれるかっていう美的形式は、やっぱり重要でさ。
小原 もうとっくに黒人の大統領も生まれたし。カマラに関しては女性っていうだけじゃなくて、他のマイノリティ要素もいろいろある。だから女性・男性っていうのはすでに相対化されてるっていうか。昔ほど大きな指標になり得ないと思うんですよね。
三浦 逆に言うと、それは望ましいかもしれないね。民主党はそれにこだわっているわけだから。小原さんもそうなのかもしれないけど、自分はトランプ派ですよ。
小原 選挙権ないから、ねえ。どちら派もないんだけどさ。ただ全米に向かって言いたい。カマラは無理だ。
三浦 じゃあ女性大統領がどういう形で生まれるかは、特に関心がない?
小原 ない。
三浦 私はやっぱり関心あるね。やはりちゃんと選挙で選ばれないと。
小原 むしろバイデンが倒れて、ピンチヒッターとして二週間もやらせればボロが出るから、その方がわかりやすくていいかな。もたないよ、大統領やったって。
三浦 そう簡単には、つまり周りが全部固めるので。バイデンみたいにさ、明らかにまずいって言動があれば別だけど、ごまかすことはできるんだよね。
小原 ご祝儀相場も二週間はあるもんね。バイデンが倒れて、本当に短い期間、カマラをとりあえず大統領にしなきゃって段階になって。で、結構恰好よく務まったふうになったら、確かにちょっとやばいかもしんないですね。
三浦 トランプが勝てば問題ないけど。
小原 カマラ・ハリスってとても魅力的な、笑顔が素敵な女性だとは思うんだけどね。
三浦 笑顔が素敵? 逆だよ、今言われているのは。
小原 皮肉です。
三浦 緊張すると笑う癖があるでしょ。
小原 そうらしいね。
三浦 深刻な質問を振られると笑ってごまかすんだよ。それが非常に不誠実に見える。
小原 そのレベルの人が、どうして検事としてやってこられたのかが不思議だったんだけど。
三浦 自分で作ったシナリオで喋るのは得意だろうけど、政治家っていうのは相手の質問に答えなきゃいけないから。
小原 アドリブ利かないかもしれない。だから討論会が見ものだと思うけど。
三浦 利かない。それが致命的なわけ。適性が逆だからさ、検事と政治家では。
小原 トランプ見てると面白いもんね。何を言い出すかわかんないから。
とにかくカマラ・ハリスは素敵な女性かもしれないけど、大統領にはどうかな、っていうところだよ。
三浦 カマラ・ハリスだけではなくて、今まで名前が出てきた女性、ヒラリー・クリントンでもミシェル・オバマでも、全部男性の力でのし上がった人たちなんだよ。
小原 そうだね。夫が大統領。
三浦 カマラ・ハリスは典型的な枕営業でさ。
小原 まあ、皆、男性も含めて、使えるものは全部使って出ていくんだからさ。過去の枕営業はがっかりではあるけれど、さほど責めるべきものではないかもね。汚職さえしてなければ。
でも日本では昔から今に至るまで、尊敬されてきた有名な女性たちには、夫の立場を利用して、っていう人は見当たらないなあ。アメリカって変な国だよね。
彼氏に下駄履かせてもらって、最後は実力不足が目に付く。ヒラリーがいくらデキるっても、「男並みに」とか「夫以上に」とか、相対的な評価に過ぎなかった。絶対的な魅力に欠けていた。だったら優秀な男でいいじゃん、って思う。
カマラは目の前の具体的なことを問われているのに、きれいごとの原理論に逃げて、しかも全然、辻褄が合ってない。攻撃すると、せいぜい遠回しの皮肉。それじゃダメなんだよね、政治家は。文学者じゃないんだからさ。男だったら、そんなレベルで大統領候補になることはないでしょ。女性の知的レベルはむしろ日本の方が高いんじゃないかな。アメリカの女って甘やかされてるんじゃないの。
三浦 それが逆にうまく働いちゃう可能性もあるわけですよ。意外と問題が解決されちゃった、とか。カマラ流のごまかしって、侮れないかもしれない。
小原 そうかもね。大衆のレベルは期待できるほど高くない。
ただ共和党の副大統領候補になったバンスにも、レベルの低さを感じます。だいじょうぶか、あいつ。まあ副大統領なんてあんなもんか。
三浦 あれはアメリカのヒロイズムの典型みたいなもんだから。いわゆる無党派層、揺れている人たちを引きつけるのに得策かどうかわかんないけど。ただあの人は優秀だし、次世代に託すことを、トランプが真面目に考えている証しだと思う。
小原 優勝なの? だったらいいんだけど。本当に?
三浦 選挙に勝つためだったら、女性か黒人にしたはずなんだよ。だけどそれをしなかった。自分の次の世代をちゃんと考えてる。
小原 どうかな。あれを次の大統領にすることをトランプが考えてるって? うーん。
あれを決めたときはさ、相手がバイデンだったじゃない。だから、さらに確実に勝てるための票読みで彼を投入したんだけど、相手がカマラになって、しまったと思ってないかな。
三浦 選挙のことよりも、やっぱり次世代のことを考えているなって、よく言われていたよね。
小原 本当にそうだったらいいんだけど。皆さん、善人だなあ。政治家って、そんなもんじゃないんじゃないの。
三浦 だって自分と考えが似た人を、ちゃんと選んでるじゃない。自分が退いた後なのよ、やっぱり。
小原 自分が退くって、これから大統領選を戦おうって政治家がさ、そんなこと考えないよ。単に御しやすい、自分を裏切らない、おバカなコピーロボットを選んだ感じがする。わたしが間違っているといいんだけど。
三浦 トランプとはバンスは考えが違うところもあるから。トランプが中間的になってきているでしょう。中絶の問題にしても、州の判断に任せるとか、選挙向けに穏健になっている。そこで昔のトランプのやり方を堅持する役割を託しているわけだよね。DEI、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンに屈せずにバンスを選んだのが非常に頼もしい。
小原 単にコピーが遅れてるんじゃないの。バンスって、カメレオンみたいに本当の自分の意見があるのかないのか、よくわかんない人じゃないですか。
三浦 履歴がまだ短いから、ちょっとわかんないけど、これからどうなるかね。
小原 そもそもトランプって、そういう自分の意見がない人のこと、すごく嫌うっていう。ただね、人間って歳をとってくると自分のエピゴーネンにどんどん甘くなっていく。その意味では確かに、次代として自分のコピーを遺したいと思うのね。今回、トランプの衰えを感じた唯一の点はバンスを選んだこと。
三浦 トランプが最初に当選した時点では、バンスは強烈な反トランプだったわけよ。
小原 それがコロッと変わった。変わるのはいいんだけど、その転換点で納得のいく何かが見えない。ただ単に、カメレオン的にその場の状況に応じて変える人っていう印象がある。
三浦 変わる人っていうのは、それなりの強力な理由に導かれたわけよ。
小原 そう。普通はね。それが見えない。こっちは日本だからかもしれないけど、どうしてもそこが見えない。
三浦 うーん、それはやっぱりトランプの政策に共鳴したんじゃないの。
小原 んー、なんか怪しいんだよなぁ。ああいうタイプの人って、匂う。ミステリー作家としてはさ。人格的に問題ありそう。
三浦 イーロン・マスクなんか、転向理由、はっきりしてるじゃない。
小原 そう。はっきりしてる。トランプもそうだけど、実ビジネスであれほど大きく成功する人は、なんとなく方向転換ってことはしないから。
三浦 イーロン・マスクにとって、電気自動車に関しては、トランプなんてもう天敵ですよ。自分の商売にとって非常に不利な人物なのに、支持すると言ってるわけよ。やっぱり政策にいかに共鳴したかが見えるわけで。
小原 共鳴はするでしょう。イーロン・マスクは宇宙開発もやってるし、ビットコインといえばイーロン・マスク、というぐらいの人です。旧ツイッターはトランプのアカウントを凍結したけど、イーロン・マスクはそれを回復し、さらに恩を売ることもできる。多様に取引できる立場なので、トヨタの会長とは全然違うんですよね。
三浦 まあ、いろいろ思惑あるんでしょうが。
ただ、今は(今だけじゃないが)反トランプの言説がものすごく誇張されて出回っているので、我々トランプ支持派としてはちょっと気が気じゃないよね。
小原 トランプ支持派っていうか…。ただ、もう九〇%ヒラリーが勝つって言われていた、あのときを思い出すと下馬評なんかまったく信用できない。
ヒラリーが勝つ、勝つって言うから、別にどっちを応援ってわけじゃなかったんだけど、万一トランプ当選だったら大変なことになると漠然と思っててさ。
トランプ当選ってわかった途端、NYゴールドの価格がブワーっと上がって。そしたらトランプが出てきて「私を怖がらないでください」って言ったんだよね。
そのとき世界中がぴたっと思考停止した。なんかシーンとなった気がした。ねえ、一国の大統領が新たに選挙で選ばれたのにさ、パニックになるって、そんな失礼な話はないよね。と、わたしが思った瞬間、たぶん世界中でそう思ったらしくて、NYゴールドの価格がドーンと下がった。おっかしくって、それ以来なんかトランプのことが嫌いになれない。
三浦 レーガンのときもそうだったんだよな、確か。
小原 考えたらおかしいよね。レーガンに大統領が務まるんだもんね。
三浦 あの頃は分断されてなかったんだよ、アメリカが。共和党だろうが民主党だろうが、どっちの支持者も反対側に入れることが結構あったんでね。だからレーガンはほとんどの州を獲ったでしょ。今、あり得ないから。5%ぐらいは反対側に入れるらしいんだけど、昔に比べるともう絶対なの。分断は。
小原 もう亡くなったけど、母の友人がホノルルに住んでいて、「アメリカ人はどんなに激しく対立していても、いったんこうと決まったら、その瞬間にびたっと一致してそれに従う」って言ってたけど、今はそうじゃないよね。なんであんな国になっちゃったんだろうね。
三浦 何が原因なのか、だよ。本当に。絶対にお互い譲れないような、何のトピックなのかな。
小原 そういうのってね、たいてい経済なんだよね。経済格差。
三浦 それは昔からあるわけだから。
小原 やっぱり、ひどくなってんじゃないかな。
三浦 どうかな。昔なかったトピックとしては、それこそジェンダーとかダイバーシティとか。
小原 こんなタイトルのトーク中になんだけど、そういう思想とか「お気持ち」とかは考え方次第のところ、あるじゃない。やっぱり経済だと思う。金だよ。
三浦 でも、それはどの時代にもあるからなあ。
小原 程度問題だよ。格差がひどくなってる。株価は上がってるけど、一部の大金持ちがほとんどの富を吸い上げてる。
で、インフレがひどいでしょ。給与がそれに伴って上がってんだから、って言うけど。わたし去年の十一月にホノルルに行ったんだけど、ものすごく物価が上がってて、皆、それに追いつくぐらい本当に給与上がってるのかなって。メインストリートを外れるとホームレスも多い。トランプが演説で「チップには税金をかけない」って言ったら皆、わーって喜ぶじゃない。ウェイトレスやウェイターさんたち、黒人も多いけど、この物価高に追いつくぐらい収入がガンガン上がってんだろうか? 物価が三倍になっても、収入が三倍になれば、その差額の余剰資金も三倍になるからすごくいいけど、実際は物価高分をなんとか埋めているぐらいじゃないのか。すると金利が高いから、車が故障したとか病気したとかで、あっという間に破綻してしまう。
三浦 それはアメリカ特有なの? 例えば日本では?
小原 日本は金利がずっと低いからね。だから円安になって輸入品の価格がじわじわ上がってるけど、アメリカほどじゃない。むしろ相対的に賃金がすごく安い。
三浦 ただトランプを毛嫌いして、トランプを応援していると言うと叩くやつがいて、もう対応できないような状態になるよね。
小原 よそ様のことですから、別に応援はしないけどさ。
ただね、わたしすごく自慢してるのは、オバマが出てきたときに一目見て「この人が民主党の代表候補になるんだね」って言ったの。「え。泡沫候補だよ」って訝しがられたけど、「この人が代表になるよ、絶対」って言った。
だって雰囲気がケネディそっくりだった。ほかに白人で金髪で若くて、範疇としてはケネディと同じって候補者もいたのよ。でもさ、そういう目に見える要素じゃないんだよね、アメリカ人を魅了するってのは。黒人初の大統領になるとまでは確信してなかったけど。
三浦 何の条件が好かれる決め手なんだろうかね。
小原 うーん。難しいけど、「力」を感じるかどうかじゃないかな。マッチョな強さとは限らなくて、若い人ならワクワクするような生命力、年寄なら経験からくる洞察力とか、それぞれの持ち味が「力」にまで高まっていれば、それが「統率力」になり得るんじゃないかな。トランプは胆力と、言うまでもなく悪運の強さ(笑)。
女性も、男と比べて遜色ないとか、夫より優秀とか、そういう相対的な点数の積み上げじゃなくて、範疇を越えた強力な存在の魅力がないと。カマラは陽気でいいけど、「力」までは感じない。
三浦 しかしヨーロッパではすでに女性首相が出ているのに、アメリカはなぜ今まで女性のトップが出てこなかったんだろう。
小原 各国それぞれ主権はあれど、経済的には中央のアメリカに対して、地方の知事さんぐらいのもんだからね。比較にならない。それに伴って軍事力も強大なわけで、大統領はその指揮を執るし。
今までたまたまいなかっただけで、女性の大統領が一人、生まれればモデルができるから、誰もそんなこと考えなくなるよね。イギリスをイメージすると「軍の指揮はやっぱり女性じゃなきゃ」って(笑)。女Aには任せられたけど、女Bには任せられない、ってだけ。菅さんならよかったけど、小泉じゃね、みたいな。そもそもお父さんの小泉純一郎が首相になったとき「離婚した独り者が政治のトップだなんて」って内心びっくりしたよ。でも別に支障はなかった(笑)。
文学の世界でも、文芸時評であーでもない、こーでもないって言ってても状況は変わらなくて。でもたった一つ、ある作品が出ることで時代の認識が大きく変わるわけじゃない。そんなもんだと思うよ。それまでの議論がぱっと霧散してしまう。
三浦 だいたいさ、前にトランプ大統領だったとき、何の悪いことがあったって言うんだろうね。めちゃくちゃ噛みつかれるんだけど。
小原 トランプ砲がさく裂すると、それは月末が多かったんだけど、経済指標と重なって為替がすごいことになってたなあ。FXとか、わたしはわかんないけど。後からはちょっと気を使ってたみたいで、月末・月初は避けていた。あー、気を使えるんだ、って、そっちに感動した(笑)。
今回については、昨日ビットコイン・カンファレンスで演説して「大統領就任の初日にSECのハゲンスラーをクビにする」って宣言してた。そんなことになったら皆、泣いちゃうよ。嬉しくて…。
まあ、大学とかで政治の話をするのはケンカになるし、しない方がいいよ。特に今のアメリカ人は気が立ってるから(笑)。実際、あの議会襲撃事件とか、ちょっと内戦っぽくなったんでしょ。
三浦 あれはね、針小棒大だよ。議会に入ったほとんどの人がスマホで写真撮ってるだけだもん。暴力的なことをやってる人は一握りで。その写真ばっかり出回ってさ。暴動でも何でもないんだよね。
小原 暴動を扇動した人がまた大統領候補になるのか、って不思議だったけど、そうなんだ。
それで、トランプは三十四もの罪名のつく重罪人であるとか。それは暴動を扇動した罪なのかと思ったら、不倫だか何だかの口止めをしたっていうのを細かーく罪名を分けて三十四個なんだってね。
三浦 金を振り込んだのを一回、二回って数えてるからね。振り込んだ回数が三十四回。
小原 ばっかじゃないの。そんなのクリントンだってさ、あの旦那さんの方ね、不適切な関係、なんてどうだっていい。奥さんがシメたらいいんだよ。
三浦 トランプの場合には、刑事裁判になっちゃったからね。
小原 だから権力の座から降りたがらないんだと思うんですよ。権力を手放した途端に罪人になってしまう。韓国なんか特にひどいけど。
三浦 トランプはよくあれで復活してきたよね。
小原 アメリカでは、マスコミの言うことなんか、そんなに信用されてないって。マスコミを素直に信じてるのって、日本人だけだって言われてる。
三浦 本当は、アメリカの同盟国である日本あたりが、マスコミで表面化しないようなアメリカの真実を暴くようであってほしいんだよ。
小原 うーん。百年経ってもないと思う。まあ、そういうのをネットが担うってことじゃないかと思うんですけどね。
三浦 マスコミによる叩きといえば、バンスがさ、子供がいなくて猫を飼う女性はどうのこうのって言って炎上してるじゃない。
小原 バンスって金融出身だっていうけど、すごく頭が悪そう。普通はね、金融エリートで他の業界に転身した人ってね、キレッキレなのよ。トレーダーでなくてもキレッキレ。そのキレがバンスには見当たらない。出来が悪かったとしか思えない。
三浦 過去の発言にそれがあったわけでしょ。文脈がね、どうなっているか。
小原 文脈がどうあれ、誰かを、例えばカマラを攻撃したいなら、明確にカマラだけを名指しでターゲットにしないと。敵を増やしてどうすんのさ。そういうの、政治センスがない、って言うんだよ。
昔、辻原登さんが「敵と味方は峻別しろ」って言ってくれたことがある。あれは何と戦ってるときだったか、たしか新潮編集部にいた風…(笑)。
でもさ、そんなことは「全米の猫好きに深く謝罪する。犬好きとして」とか、「子なし女性に増税するけど、子なし男性にはもっと増税する、その差額で子なし女性にアメリカ国家がブランドバッグをプレゼントする。男は甲斐性。ダメ?」とか。いくらでもケムに巻けるじゃない。それを結局、大真面目でつまらん自己弁護をするでしょ。言っちゃなんだけど、貧しく育った感じが悪い方に出ている。
三浦 意外とそういうところから、地滑り的にカマラに票が行ってしまうってことはあり得るな。
小原 ただ中絶禁止とか、子供がいない女性をバカにした発言とかに対して怒るのって、それに該当する女性だけだと思うんですよ。子供をいっぱい作って「わたしこそ女の鑑よね」って思いたい、田舎のおばちゃんたちは喝采するかもしれない。その人たちはもともと共和党員だから、票には影響しないと思うけど。
三浦 だから問題は無党派層なんだよ。どっちにでも行きかねないような人々にどうアピールするか。本当にね、トランプに勝ってもらわないと困るんだよ。
小原 三浦さんは、なんでトランプに勝ってもらわないと困るんですか?
三浦 学生らが、ウォークに洗脳されてしまってさ。ウォークっていうのは目覚めている、という。
小原 意識高い系(笑)。
三浦 ウォークの軽薄なイデオロギーに染まってしまって、知的レベルが下がってるわけよ。東大なんか見ても。
小原 東大といえば、夏目漱石も学生からボイコット運動くらってるよ。前任者のラフカディオ・ハーンがロマンチックに夢を語るみたいな授業をして、学生は皆、いっちょまえの文学者にでもなったつもりでいたら、新任の夏目漱石が怒ってさ。基礎学力が低すぎるって、中学生レベルの英語テキストを使わせようとしたんだって(笑)。学生なんて、そんなもんよ。
三浦 知識層は民主党支持なんだって考えがもう蔓延しているんだよね。共和党は田舎の無教養な人々で、白人貧困層なんだと。
小原 もともと共和党政権っていうのは金持ち政党ですよね。
三浦 本来はね。で、民主党がどっちかっていうと社会主義の代用になっているわけであってさ。それがいつの間か逆転しちゃったからね。
小原 まあ、田舎にホームステイでもしたら、とても付き合いきれないよと思うに決まってるけど。都会のリベラルなお兄ちゃん・お姉ちゃんたちが恋しくなるだろうね。
三浦 それにまた圧倒的に金を持ってるから、民主党陣営の方が。
小原 産業構造が変わったからかな。製造業が富を生むのではなくて、高度情報化社会になった。アマゾンとかアップルとか、製造ってもエヌビディアとか。
三浦 コンプライアンス的に差別意識がない、うちは開かれた会社、ってポーズを取らなきゃいけない。ダイバージェンスばっかりじゃない。
小原 GAFAとかそうだね。
三浦 民主党の問題としては、トランプは民主主義の敵だと言いながら、今回の大統領選のやり方を見ると、完全に民主主義を否定しているでしょう。予備選挙の圧倒的多数でバイデンを選んでおきながら、引きずり降ろしてるじゃない。だったら予備選、やり直せって話でしょ。中枢部だけで決めちゃうという。
小原 民主党はもう今回、勝つ気ないんじゃないかと思ってんだけど。勝たないから大丈夫だよ。
三浦 勝たなくてもさ、予備選を経ていない人物が大統領候補になるということ自体が問題で。
小原 確かに手続き論は大事だと思う。大義名分、正当性ってのはボディブローのように効いてくる。
三浦 そうなったら象徴的といえば象徴的なのかもしれないけど、最初の女性大統領はちゃんと民主主義を守って、やっぱり選挙で選ばれてほしいね。予備選からきちんと勝ってほしいよね。そうでないとインチキだもん。
小原 むしろ男性だったら、袋叩きにあってるかも。「いままでおてつだいしていた女のこだから、横滑りでいいや」みたいな感じ?
三浦 だってバイデンをあれだけ圧倒的多数で推しておきながら。しかもバイデン本人の意志というよりは、バイデン潰し、党内のプレッシャーで辞めさせたんでしょ。とんでもない話だよね。これ、民主主義に完全に反している。有権者の何千万票を取って大統領候補になったんだから。これでもし仮にハリスが大統領選で勝ちでもしようものなら、完全にケチがつくよね。せっかくの初の女性大統領であるにもかかわらず。
小原 初の女性、とかいうのは、別にどうでもいいんだけどさ。そもそも特殊関係にある男のヘルプがないと、女一人では立てないような国なんだ、アメリカは。勝ったところでどうせインチキだって皆思ってるよ。
それにトランプは最初、今は強がりって言われてるけど、「バイデンよりカマラの方が御しやすい」って言ってた。確かに年寄りって、まだらボケって言われていて、もう本当にまだらでさ。正気のときはバリバリ正気だから、カマラより数段まともだよな、とは思う。
三浦 だから、これも民主党の硬直したところで、そもそもバイデンをあんな圧倒的多数で選んでしまっていること自体、もう民主党支持者は頭がイカれていたわけよ。つまり現職の大統領がやるって言ったら、ノーと言えない風土なんだよ。
それと陰謀論と言われるかもしれないけど不正選挙ね。ケネディ・ジュニアを追い出したのもそうでしょ。あのまま民主党にいたら勝ってたかもしれないんだよ。バイデンを当選させるために追い出したわけでしょ。結局もうライバル全部、蹴落としてる。あの二〇二〇年ね、バーニー・サンダースが一番、金を集めてたのに、左派にしかアピールしないからって叩き潰した。ほんと反民主主義的だよ。
小原 そして誰もいなくなった。それでカマラを推すはめになるなんて、お笑いだよ。バイデンも権力者の常で、ナンバー2が自分に取って代わるなんて想像してなかった、したくもなかったってことだよ。実際、副大統領になると、大統領にはなかなかなれないじゃない。
三浦 過去データでは、大統領選挙に出た場合の成績、悪いよね。
小原 悪い。すごく有能な副大統領でも、出ると負けちゃう。
三浦 まあ、しょうがないよね。現職の政策からあまり変わんないだろうって、期待感がないわけだよ。
小原 アメリカ人は特に変化と刺激を求める人たちだからね。大統領選もいつも競る、もしくは競っているように演出するよね。カマラが優勢、優勢って言ってると逆になるとか、ほぼトラとか言ってるとどんでん返し、とか。マスコミは逆神だよ。
三浦 これで万一にでもハリスが当選したら、せっかくのあのトランプの素晴らしい写真が台なしになるわけでしょ。
小原 それが一番心配だっていうね(笑)。
三浦 それは許せないね。これも美的な理由だな。
小原 あの写真を見た瞬間、この勝負終わり、って話だよね。もう決まり決まり。そうでなければ間抜けすぎる(笑)。
部外者であるわたしたちが考えるのは、そんなところ。で、トランプ政権が成立して、そうなると日本のリーダーは高市さんしかないと思う。
三浦 そう、高市でしょ。
小原 ジェンダーを無視しても、他にいないんじゃないかと思うんだけど。
三浦 そうそう、これこそ関係ないね。
小原 ただ、つい昨日ぐらいかな。どこかの記者さんが高市さんの欠点を述べていて。
高市さんって能力も高いし、志も高い人だから、頭を下げられない。菅さんにでも麻生さんにでも平身低頭でお願いします、お願いしますって言えば、皆が競って高市さんをバックアップしてもおかしくないぐらいの状況でもあるのに、あの人はそれ、できないでしょ、って。
実際、枕営業なんか思いもよらない、優秀な女性は根回しも苦手だよ。ヒラリー・クリントンもそうかもしれないけど、有能で素晴らしい人でも、隙がないっていうのは、トップとして欠点になり得るのかなって。
三浦 うーん。やっぱり僕は高市さんで能力的にも文句なし。
小原 だからこそ心配なんだよね。
前の総裁選のとき、高市さんのことを批判して「女性部会とか、そういうのに全然顔を出さない」って。そりゃそうだろう、馬鹿らしくていられないだろう、と思うんだけど。
ただ、そういうところはそういうところで、弱者の王っての、そこの連中を仕切ってのし上がってきたのがいるわけでしょ。野田聖子とか? もう能力的にも雲泥の差があるじゃない。総裁選でそんなのと並ばされて、場合によっては女性対決みたいに言われてさ、屈辱だと思うよ。よりにもよって女性部会に出ろなんて、誰に向かって言ってんだか。
三浦 野田聖子ね。だいたい、あの喋り方を見てるとわかるよね。それに比べて高市さんの堂々たる威厳みたいなもの、自信に満ちた雰囲気ね。
小原 資料も何も見ないで、立て板に水だもんね。しかも話が具体的、数字もよく覚えている。安倍さんもそうだったけど、どこからその自信が出てきてるかって、やっぱり勉強して、努力もしてるわけでしょ。生来の理解力もすごく高い。
トランプってああ見えて、めちゃくちゃ頭いいし、胆力も反射神経も証明済みじゃない。小泉とか河野とか出て行ったらさ、年齢もあるかもしれないけど、まあ一瞬で見切られてしまうよ。
三浦 だってトランプは四〇代前半には、すでに大統領待望論があった。一九八〇年代に、日本のテレビでトランプの特集やってるんだよ。まだ若い頃でイケメンの。ビジネスで成功した大金持ちであり、なおかつ政治的な存在って。そのインタビュー見ると博識だしさ、世界情勢もわかってるし。今みたいな罵り口調じゃないわけよ。ケネディ大統領ぐらいの年齢ですよ。
小原 その頃の方が良かったかもしれないけど。8年しかできないわけだから、今の方がラディカルなことがやっぱりできるでしょう。何するかわかんないっていうところ、面白いよね。
三浦 トランプを皆、過小評価してるよね。
小原 麻生さんだって会いに行って、とんでもねえ男だと思ってたら全然そんなことない、メモ取りながら熱心に人の話を聞くし、すっごく勉強してる、と。まあ麻生さんとは違うかもね…。
三浦 麻生はまあね、ウマが合うだろうね。
日本のトップは誰がなろうが、アメリカとの関係は心配しなくていいって。誰かがユーチューブ動画で言ってたのの受け売りなんだけどさ。安倍さんのときの通訳が担当すれば大丈夫だって。
小原 また、いい加減なこと言うなあ。
三浦 意外とトランプみたいな人間っていうのはさ、そういう人間関係のディテールで動くから。
小原 だとしても安倍さんのディテールであって、通訳じゃないよ。
三浦 その通訳はさ、経緯をいろいろ知ってるから。
小原 そんなんだったら通訳が政治家になってる。どんな馬鹿なことでも言う人はいるね。もし万一、通訳自身がそんな勘違いをしているなら、すぐに辞めさせるべき。非常に危険だよ。大谷の通訳だった水原じゃあるまいし、人にはそれぞれ分というものがあるでしょう。
三浦 あとトランプは、ウクライナ問題をどう解決するんだか、見たいよ。あんなに大口叩いてたし。
小原 両方に電話するんじゃない? やめやめって言って、終わり。
三浦 どういう終わらせ方をするのかって、それ見るためだけにでも、トランプに投票する価値があるよ。
小原 ウクライナへの武器供与を止める。それが一番いい。ロシアにある程度、割譲させる。もともとロシアの一部だったのは間違いないし、巨視的に言えば内戦みたいなものでしょう。国際政治で、どちらかが完全なる善、もう一方が完全なる悪というのはない。どっちにも言い分はあるし、どっちに耳を傾けるのか、でしかない。
理解が足りないのかもしれないけれど、実際、ゼレンスキー大統領ってプーチン以上によく知らない。相手も日本にまったく興味ないようだし、ようするに接点がない。関係ないところが余計な口や金を出さなければ事態は単純化する。アメリカ・ファースト、ジャパン・ファーストが結局は世界平和をもたらす。そういうレベルでトランプの言ってることを理解しています。
三浦 一番期待しているのは、トランプになってアメリカがNATOから脱退してくれることですよ。ワルシャワ条約機構はとっくに消滅して、対立する理由もないのに、しかも旧ワルシャワ条約機構の国々が今やNATOに入ってる。やりすぎでしょう。しかも旧ソ連であるウグライナまで入るって言われたら、ロシアが黙ってられないの当たり前の話だよね。
小原 それがロシアの言い分だね。
三浦 向う側の身になってみろって話だよね。
小原 うん。
三浦 ソ連はもう経済的に負けたって認めたんだから。冷戦に敗れた相手を追い込むようなことをして、何が嬉しいんだろうと思う。
小原 同意する。嫌な国ではあるけど、バランスだよね。
三浦 西ヨーロッパもアメリカも嵩にかかってさ、どんどんNATOに飲み込んでいったわけでしょ。ソ連はもう白旗上げたのよ。完全に屈服したのよ。もはや共産主義国でもないし。なんでそんなにいつまでも敵対視しなきゃいけないの、ってこと。
小原 我々はよくも悪くもロシアとは付き合いがある。付き合わざるを得ない。天然の鮭が入ってこなくなったら、わたしのアスタキサンチン美容はどうなる?
一方でウクライナとは互いに縁がない。それを踏まえてスタンスを決めればいいだけのことであって、善とか悪とか言っても解決にならない。メディアの情報は当てにならないし。
三浦 中東についてはアメリカ一丸となってイスラエル支持っていうのは動かない、民主党だけでなく共和党もね。それは仕方ないだろうな。
小原 タッチしないと言っても、是々非々で取引はできる。日本もちゃんと核武装して、自身で国防する姿勢ができれば、トランプはギブアンドテイクで協力すると思うよ。そういうことを言ってるんだと思う。で、極めて常識的な考えだと思うんだよね。
三浦 そうなんだよね。トランプが大嫌いという人に理由を聞いても、具体的に答えないんだよ。嘘をつくだとか、顔が嫌いだとかさ。
小原 顔はしょうがない(笑)。
三浦 嘘つきっていうのはね、ベネズエラの刑務所がバイデンのせいで空っぽになってるんだって、トランプのそういう発言のことなんだよね。移民と称して犯罪者をアメリカに送り込んでるんだと。
小原 空っぽではないって? 何人かは残ってるってか(笑)。そんなのリテラルに真に受ける方が間違ってるって話じゃない。
三浦 トランプ節をいちいち「ウソ」って言い募るんだよ、反トランプの連中は。レトリックなんだからさ、そんなもん。トランプはそういうこと言うのが持ち味なんだよ。
小原 その持ち味が気に入らないんでしょ。ムシが好く、好かないって、どうしてもあるから。
ただ、ここまで深い分断になっちゃってるっていうのはやっぱり経済格差だと思うのね。だからトランプがもうどんな手を使っても、とにかく国を豊かにするんだと。
昔はね、アメリカ人っていうのは高校出て、大学なんか行かないで、町の工場で働いていても、郊外に素敵な一戸建てと真っ赤な車を持ってて。カーペンターズのレコードジャケットみたいな。それを見てわたしたちは、アメリカってなんて豊かな国なんだろう、と。
その豊かさは単に拝金主義者たちのものとは言い切れない。アメリカ文学的な国民感情であり、今となっては郷愁をともなう抒情なんだと思うんだよね。経済格差が深い分断を生んでいるって、そういうことなんじゃないか。だからトランプの考えていることって、わりかしウェットなことだと思うよ。
三浦 その格差が生まれたのは、貧しい移民が増えたからでしょ。しかも不法の。
小原 その意味では移民を徹底的に追い出す、それが一筋の希望になるってことだよね。アメリカを創ってきた自負のある白人男性でありながら、貧困や劣等感に苛まれている人たちにとって、女とはいえ、また有色人種とはいえ、エリートでございってへらへら笑いながら大統領候補だの副大統領だのになっているヒラリーだかカマラだかは、やっぱり許しがたいんじゃないか。差別主義者って呼ばれるから、なかなか口には出せないけど、そうなんじゃないか。その気持ちを想像すると、最初の女性大統領なんて、やっぱりどうでもいい。豊かでありさえすれば、もともとはすごく鷹揚な国民性だと思うんだよね。
三浦 その意識が結果に反映されるかっていうのが心配なんだよね。陰謀論と言われるけど。選挙不正はアメリカ大統領選の伝統なんだよ。
小原 そうなんだ。
三浦 ケネディが当選したときなんか、父親がものすごい金ばらまいてさ。で、これはもう毎回ひどくてさ。特に民主党、不正は込みなんだよ。何をしようが勝てば勝ち。不正込みで負けたら潔く負けを認める不文律があるわけで。
前回は新型コロナに乗じて郵便投票で大規模な不正をやったわけよ。やり方は違ったけど、不正そのものは例年通り。ただトランプっていうのは、もともとエスタブリッシュメントの外にいる人間だから、バカ正直に糾弾したわけだね。不文律を無視して。それでああいう騒ぎになった。大統領選っていうのは毎回、手を変え品を変えて不正をやるの。当たり前なんだよ、両陣営が。だから「不正は無かった」というのは大ウソなんだけど、「不正があったから負けを認めない!」っていうのもダメなんだよね。
小原 クリントンの副大統領だったゴアとブッシュの大統領選のときは票のカウント方法で揉めてたけど、そもそも総投票数では決まらない選挙制度にも不満があるとしたら、不正をしても認めないってことになるだろうね。
三浦 だから今度も、不正込みで、カマラがどう化けるかっていうのは油断できなくてね。
小原 繰り人形にしてしまえばいいんだもんね。最初からインチキだし。
三浦 民主党の内部で不正をやり合ってんだからさ。だって一番人気はサンダースなんだよ、毎回。これを落とすために、ものすごく洗練された不正の手法を磨き抜いている。それを今度は共和党相手に発揮するわけでしょ。
小原 うーん。それをブロックするのも実力、ということか。
三浦 最後までわかんないって話ですよ。
小原 それでこそ大統領選、だけどね。
文学金魚はNFTを発行しようとしているので、広義の、というか儲かってないクリプト民なのかな(笑)。だからトランプ派かもしれないけど、カマラが仮想通貨推しになるなら、まあそれでもいいか、みたいな。典型的な無党派層だね(選挙権なし 笑)。
そういえば昔、庭師がたまたま大統領になっちゃって、わりと適任だった、ってアメリカ映画があったじゃない。あれ、傑作だったと思うけど、そんなもんなのかもよ。
三浦 そうね。アメリカではまだいいから、日本での最初の女性総理が誕生してほしいよね。
小原 それもなってから、あ、そういえば高市さんって女だった、って感じかも。だって、実はトランスジェンダーでした、ってもし仮にカミングアウトされたところで他にいないんだもん。
三浦 そう、それでいいや。
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*『トーク@セクシュアリティ』は毎月09日にアップされます。
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