■小原眞紀子ミステリー小説第一弾『香獣』■
元CAの日田芙蓉子(ひだふよこ)は離婚を機に、CA時代に知り合った総会屋の糟谷(かすや)の事務所で働いている。表向きはマナー講師だが、CA時代の経験を活かして企業秘密を探る調査員だ。糟谷は〝女の優雅さは金になる〟ことを知っていて、芙蓉子を女しか出入りできないハイソな場所に派遣している。芙蓉子はふとしたきっかけで老舗化粧品メーカー・エゼーナに潜入することになる。エナーゼでは各界の企業経営者や重役を招待して優雅な聞香(ききこう)の会を開いていた。この会にはなにか裏がありそうだ。またエゼーナ社長の小宮路秀哉(こみやじひでや)には十樹(とき)という弟がいる。ほとんど言語能力のない獣(けもの)のような若者だが、異様に鋭い嗅覚を持っている。芙蓉子の表向きの派遣理由は十樹に行儀作法を教えることである。ただ何もつかめない間にエゼーナの社員やアルバイトの若い女たちが次々に怪死してゆく。自殺として処理されるが芙蓉子は疑念を抱く。やがて優雅な香道の、源氏香の図形模様が暗号として浮かび上がってくる。エゼーナが優雅な聞香の催しの裏に隠しているものは何なのか、なぜ香水メーカーの女たちが自死と見まがう不審死を遂げてゆくのか、言語能力がない異様な嗅覚の持ち主・十樹(香獣)はなぜエゼーナ化粧品の中核なのか。暴力を使わず武器も持たず、鋭い勘と知性と女の武器を巧に使って芙蓉子はエゼーナ化粧品の秘密と不審死の謎を解き明かしてゆく。評論集『文学とセクシュアリティ――現代に読む『源氏物語』』で『源氏物語』を現代文学にまで脈々と受け継がれる日本の小説の原点として鮮やかに読み解き、高い評価を得た小原眞紀子による金魚屋ロマンチック・ミステリー第一弾!
四六版
368ページ
装幀 小原眞紀子
ISBN978-4-905221-10-4
定価1,700円(税込)
【著者略歴】
一九六一年生まれ。慶應義塾大学数理工学科・哲学科卒業。詩人としてだけでなく、小説や現代詩歌、古典文学の批評も手がけるマルチジャンル作家。著書に詩集『湿気に関する私信』、『水の領分』『メアリアンとマックイン』(小原憲二との詩画集)、評論集『文学とセクシュアリティ――現代に読む『源氏物語』』がある。
小原眞紀子は詩人としてスタートしましたが、小説を書き、詩歌、古典文学の批評も旺盛に手がけるマルチジャンル作家です。詩集『メアリアンとマックイン』は日本の女性詩人が書いた最も長い詩(長篇詩)として知られます(1,403行)。また評論集『文学とセクシュアリティ――現代に読む『源氏物語』』で『源氏物語』を新たな視線で現代小説の基礎として読み解き高い評価を受けています。『香獣』は『源氏物語』や香道の『源氏香』など、日本の古典や伝統文化の知識を駆使した知的でスリリングな本格的ミステリー小説です。