■鶴山裕司評論集『正岡子規論-日本文学の原像』■
有名だが今ひとつ子規文学に焦点が合わないのは子規をずっと専門俳人として捉え続けてきたからである。本書は子規が手がけた俳句、短歌、散文(写生文小説)すべてを有機的に分析しその文学の全貌を明らかにしている。
「第一部 正岡子規論」は「Ⅰ 序論-子規文学の射程(パースペクティブ)」「Ⅱ 子規小伝」「Ⅲ 俳句革新-俳句の原理」「Ⅳ 短歌革新-短歌の原理」「Ⅴ 散文革新-写生文と私小説」の構成。子規文学を批評するだけでなく俳句・短歌の原理を解き明かしている。また「Ⅴ 散文革新」では短歌・俳句文学が維新以降の現代小説の底流になっていることを明らかにしている。
「第二部 子規派作家論」は「Ⅰ 高濱虚子論―有季定型は正しい」「Ⅱ 河東碧梧桐論―新傾向俳句から自由律俳句へ」「Ⅲ 伊藤左千夫論―写生短歌から自我意識短歌へ」「Ⅳ 長塚節論―生粋の写生作家」「Ⅴ 夏目漱石論―世界を遠くから眺めるということ」の構成。短命だった子規文学のヴィジョンが、子規派作家たちによってその後どのように完成されていったのかが論じられている。
「附録 俳句文学の原理―正岡子規から安井浩司まで」は「突飛なようだが俳句とイスラーム教は似ているところがある。イスラーム教では唯一神アッラーが絶対不可侵で俳句では「五七五に季語」が絶対である」で始まる。日本独自の〝非-自我意識文学〟である俳句が子規から現代前衛俳人の安井浩司にまで継承されていることを解き明かし、21世紀俳句の姿をも示唆する画期的評論。
四六版
440ページ
装幀 伊達のび太
ISBN978-4-905221-13-5
定価2,000円(税込)
一九六一年富山県富山市生まれ。明治大学文学部卒業。詩人としてだけでなく、小説や現代小説・短歌・俳句・現代美術・古美術の批評も手がけるマルチジャンル作家。著書に詩集『東方の書』『国書』(『力の詩篇』第一の書、第二の書)、『おこりんぼうの王様』(第三詩集)、『聖遠耳』(第四詩集)、評論集『日本近代文学の言語像Ⅰ 正岡子規論―日本文学の原像』、『日本近代文学の言語像Ⅱ 夏目漱石論―現代文学の創出』、『詩人について―吉岡実論』、『詩誌「洗濯船」の個人的研究』がある。
鶴山裕司はポスト戦後詩・現代詩を担う詩人ですが、小説を書き、短歌・俳句・小説・現代美術・古美術の批評も旺盛に手がけるマルチジャンル作家です。『正岡子規論』は『日本近代文学の言語像』シリーズの一冊で、先に『夏目漱石論-現代文学の創出』(日本近代文学の言語像 Ⅱ )が刊行されています。『日本近代文学の言語像』シリーズは『森鷗外論』で完結予定です。
『日本近代文学の言語像』シリーズは維新降の日本近・現代詩と小説における最重要の文学者の仕事を徹底検証することで、閉塞感漂う現代文学に風穴を開ける評論連作です。『正岡子規論』は子規について知識のない読者でも「子規小伝」から読み始めれば子規がどんな文学者だったのか簡単にわかります。
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