静岡朝日テレビが配信するこの動画、一言で言えば「オールドメディアの良心と旧弊が気持ちよく同居している」。地方テレビ局という立ち位置が持つ独特の空気感と、それをYouTubeで能動的に拾い上げて見るという現代の視聴スタイルが重なり合うことで、メディア環境の今がくっきりと浮かび上がってくる。
番組全体のトーンは、やたら落ち着いている。キー局の報道番組でありがちな過剰な対立の煽りや、感情を不必要に揺さぶるような演出がなく、地道な現場取材と丁寧な編集という、オールドメディアが本来持っていた強みがちゃんと機能している。特に後半、静岡県清水町の精密加工企業・STテックを取り上げ、熟練の職人技が宇宙産業やロケット開発を支えているという事実を追ったVTRは、地方局にしかできないアプローチの好例だ。こういう映像を見ると、テレビというメディアへの信頼が素直に戻ってくる。コンテンツを作る側としても、取材の積み重ねが持つ重みをあらためて感じさせられる。
一方で、「ああ、やっぱりテレビだな」という瞬間も正直ある。消費減税表明を受けての街頭インタビューの画一さ、新聞各紙の社説をパネルに並べて一斉に見せる手法——これらは長年繰り返されてきたテンプレートそのもので、視聴者の側も慣れすぎているせいか、どこか流し見モードに入ってしまう。スタジオの高橋洋一氏が「新聞社説は財務省の言いなり」、「減税を批判するなら自分たちの軽減税率をやめればいい」といった切れ味のいいツッコミで熱量を上げてくれるが、進行の骨格自体は古めかしく、その型を崩すには至っていない。

興味深いのは、この番組が「朝日」の名を冠するANN系列局の制作だという点。中央の朝日新聞やテレビ朝日が醸し出す硬直したイメージや特定のイデオロギー色と比べると、静岡という地方に軸足を置いた現場には風通しのよさがある。巨大なメディア組織の末端にいるからこそ中央の制約から程よく距離を置き、政権幹部や多様な論者を比較的フラットに画面に並べられるのかもしれない。この緩やかさが番組全体のバランスと安心感を担保している。媒体を作る立場から見れば、中央からの距離が編集の自由度を生む、という逆説はなかなか示唆的だ。
そしてこの動画を象徴的にしているのは、そうした「ローカルメディアの良心」を、放送時間も地域制約も関係なくYouTubeで拾い上げて見ているという、現代ならではの視聴構造だ。オールドメディアが積み重ねてきた取材力や番組づくりの作法が、ネットというオープンなプラットフォームを経由して初めて広く届く——その皮肉な回路を、この動画はさりげなく体現している。多少の退屈さも込みで、メディアの過渡期の面白さと地方局のポテンシャルを印象付ける、なかなかのものだ。
水野翼
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