画面から聞こえてくるのは、ちょっと舌足らずで、しゃがれた独特の「かすれ声」だ。元テレビディレクターという経歴を持つ「さっきー」氏が主宰するこのチャンネルは、日頃からテレビ業界や芸能界への容赦ない批評を展開している。しかし、その刺々しいテーマとは裏腹に、彼の独特な声質と淡々とした語り口は、視聴者の耳に驚くほどスッと馴染む。毒の強い辛口トークを角を立てずにさらりと聞かせるこの「声の資質」こそ、彼がユーチューバーとして持つ非常に有利で貴重なアドバンテージだろう。
今回取り上げられているのは、ソロキャンプブームの立役者である芸人・ヒロシ氏と、オリジナル焚き火台の制作をめぐるメーカーとのトラブルだ。自身のアイデアを盗用されたとSNSで告発したヒロシ氏に対し、メーカー側は無償で試作を繰り返した経緯や契約条件の食い違いを反論し、話は泥沼化の一途をたどっている。双方の主張が入り組み、どちらが一方的に悪いのかの境界線は曖昧だが、さっきー氏の解説はものづくりの現実と「知的財産権」の本質を鮮やかに浮かび上がらせる。
とりわけ秀逸で思わず吹き出してしまったのが、知的財産権を住宅建設に例えた比喩だ。「家にこだわりを詰めたからといって、その設計やアイデアの権利が施主のものになるわけではない。もしそれが通るなら『家にキッチンを作る』ということ自体が先人のアイデアだから誰も家を建てられなくなる」という極論は、身も蓋もないが妙に納得させられる。

正直に言うと、僕はヒロシが好きだ。あの意固地で、自分の世界に閉じこもる不器用なところが、なんだかんだ憎めない。ただ今回の一件を見ていると、そのクローズドな世界に長く生きてきたせいで、「自分が思いついたアイデア」そのものに絶対的な価値と権利があると、ちょっと勘違いしてしまったのかもしれないな、とも思う。
さっきー氏はさらに、発注元であるテレビ局(プロデューサー)が圧倒的な権利を握るコンテンツビジネスの常識と、技術やノウハウの蓄積が価値となる製造業の違いを指摘する。ヒロシ氏は無意識にテレビ業界の感覚を持ち込んでしまったのかもしれないが、そもそも彼はそうした業界の構造を嫌ってYouTubeという独自の縄張りを築いたはずではなかったか。
メーカー側が示唆する被害届の提出について、名前を直接出さずに体験談を語っただけのヒロシ氏個人にどこまで法的な波及があるかは未知数だが、誹謗中傷に走ったネットユーザーを含め、事態はじわじわと不穏な影を落としている。それでも、この重苦しいテーマをさっきー氏のかすれ声で聴いていると、冷ややかな批評でありながら、どこかエンターテインメントとして消費できてしまう。厳しい視線と聴き心地の良さを同居させる彼の語りは、やはりユーチューバーとして得難い才能なのだ。
水野翼
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