
国際情勢や安全保障の裏側を平易な言葉で解くジャーナリスト・山田敏弘氏のYouTube「スパイチャンネル」。今回取り上げるのは、世界中で急速に建設が進む「AIデータセンター」を標的に、ロシア・中国・イランといった反米国家がいかなる情報戦・フェイクニュース工作を展開しているかを扱った一本。
データセンターが膨大な電力と水を消費して地域環境を破壊しているという誇張された批判、あるいは「データセンターのせいで数日以内に地震が起きる」といった荒唐無稽な偽情報——それらをメディアやSNSに流し込み、アメリカ国内の住民による反対運動を意図的に燃え上がらせることで、米国のAIインフラ整備を内側から遅延させようとする工作の実態が手際よく明かされる。陰謀論めいた語り口に陥ることなく、証拠と文脈を積み重ねながら論を進める姿勢は、長年この分野を取材してきたジャーナリストの仕事。
この重厚かつ不穏なテーマを扱いながらも、番組全体の空気には別に圧迫感はない。
その最大の理由は、語り手「スパイ山田」こと山田氏の佇まいにある。視聴者やコメント欄でもしばしば指摘されるように、山田氏は解説中ほぼ一貫して「ニヤニヤ」した半笑いの表情を崩さない。情報戦の恐ろしさを語りながらも、その口調と顔つきに深刻さがなく、「人間どもの情報工作など、所詮こんなものですよ」と高みの見物を決め込んでいるような飄々とした軽みがある。それがこのチャンネル特有の浮遊感、テンポを生み出している。で、山田氏がテレビ報道番組に出演する際はニヤけず、真面目な顔でコメントしているとのこと。YouTubeという場だからこその「ニヤニヤ」に、ジャーナリストとしての達観が透けて見える気がして味わい深い。

さて今回の動画の核心である「AIデータセンター反対運動」について、私なりの見解も述べておきたい。
データセンターとは、現代のデジタル社会、ひいては次世代の知性を担うAIが呼吸し、思考するための巨大な「脳であり肺」。それを「電力の無駄遣い」「環境破壊の元凶」と決めつけ排斥しようとするのは、産業革命期に蒸気機関を打ち壊そうとしたラッダイト運動の現代版ではなかろうか。テクノロジーの進化が不可避に生み出す熱量やエネルギー消費を前に人間が抱く原初的な拒絶——その構図は、時代が変わっても繰り返される、というわけ。
AIが高度なレベルに到達しつつある今、データセンターを巡る攻防は国家間の覇権争いにとどまらず、「その進化を人間社会が受け容れられるか否か」という、より根深い問いを内包しているのかもしれない。反米国家の工作に乗せられ自国のインフラ整備を遅らせることは、未来そのものへのアクセス権を手放すに等しい。
情報工作の裏側を覗かせながら、現代テクノロジーが直面する本質的な摩擦を提示してくれる一本。スパイ山田のニヤけた笑みとともに、AIと人類の行方についてぼんやり思考を巡らせてみるのも悪くない。
水野翼
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