
ピー子 『群像』2026年9月号。創刊80周年プレ記念号で、戦争総特集「愚かなる戦争」。毎年9月号で戦争を特集してる伝統があるよね。巻頭新連載が奥泉光「ピアノソナタ」。
ヨミ太 そう。奥泉光は1956年生まれの芥川賞作家で、『石の来歴』『ボルヘスの影』『地の底の記憶』など、歴史や思想を大胆に織り交ぜた実験的・物語的な作風で知られる。ベートーヴェン最後のピアノソナタに第三楽章は存在するのか——って切り口が、奥泉さんらしい知的な遊び心と深さがありそう。戦争特集の巻頭に据えたのも象徴的だね。
ピー子 未邦訳批評に加藤典洋「不思議の国のカトウ・ノリヒロ 『敗戦後論』をめぐる英語圏からの批判への遅ればせながらの応答」(訳・エリス直美)。加藤さんの未公表論考なんだって。
ヨミ太 加藤典洋は1948-2019年。文芸批評家で『敗戦後論』で大きな議論を巻き起こした人。英語圏からの批判に対する遅ればせながらの応答が、死後に日の目を見る形。マイケル・エメリックの解説「春半ノート」も付いてる。加藤さんの「敗戦」をめぐる思考が、今の時点でどう響くか、特集の核のひとつだよ。
ピー子 批評に高原到「複数形の「平和」のために」、ノンフィクション前田啓介「昭和二年生まれの戦争」、論点頭木弘樹「当事者嫌悪 聞くことが語ること、語ることが聞くこと」。エッセイが藤岡拓太郎「戦争ゆるさんほんとにやだいいかげんにしろ日記」、マーサ・ナカムラ「千鳥ヶ淵の桜と靖国神社」。ルポに豊永浩平「スケッチ・オブ・アメリカ」。
ヨミ太 頭木弘樹は戦争体験などの「当事者」の語りが否定される問題を論じるらしい。玛莎・ナカムラは詩人・批評家で、靖国や千鳥ヶ淵を通して記憶の風景を描く。豊永浩平は最近の芥川賞候補経験もある書き手で、アメリカのスケッチが戦争特集にどう絡むか気になる。全体として「愚かなる戦争」というタイトル通り、単一の「平和」ではなく複数の視点から問い直す構成になってる。

ピー子 芥川賞受賞記念「小砂川チトへの15の問い」! 最近受賞したばかりだよね。新連載に永井玲衣「言わないで言う」、沼野充義「いまだに死ねないロシア文学のために」。掌篇シリーズが筒井康隆「体臭禍」。
ヨミ太 小砂川チトは1990年岩手生まれ。『ゾンビ回収婦』で第175回芥川賞を受賞したばかりの新人。15の問いかけで受賞後の思考や作品の背景を掘り下げる企画は、群像らしい丁寧さ。永井玲衣は哲学者・エッセイストで対話の名手、沼野充義はロシア文学者として第一人者。筒井康隆の掌篇は、いつもながら予測不能で痛快そう。
ピー子 中篇一挙が舞城王太郎「一生好き。」と村雲菜月「現在代行形」。創作に乗代雄介「水の中のメタセコイア」。
ヨミ太 舞城王太郎は1973年生まれ。『阿修羅ガール』でデビューして以来、暴力と愛、ユーモアと深刻さを独特の文体で混ぜ合わせる人気作家。中篇一挙は読み応えありそう。村雲菜月は近年活躍が目覚ましい若手。乗代雄介は『本物の読書家』などで知られ、日常のディテールを丁寧に積み重ねる作風。水の中のメタセコイアって、静かな詩情が漂いそう。
ピー子 対談「「先生」を語ることば」渡邊英理×長瀬海。最終回が円城塔「鳥のいない国」、毬矢まりえ×森山恵「源氏百人一首 らせん譚」。随筆も飯岡幸子、伊藤全記など多数。
ヨミ太 円城塔の連載最終回は大きなトピックだね。円城塔は1972年生まれの芥川賞作家で、SF的・数理的な発想を文学に持ち込む実験的な書き手。「鳥のいない国」がどう着地するか。源氏百人一首のらせん譚も連載完結で、古典と現代の交錯が楽しみ。
ピー子 創刊80周年を前に、戦争という大きなテーマを多層的に扱いながら、新連載や中篇、最終回をしっかり配置してる。『群像』らしい「文×論」のバランスがいい号だね。
ヨミ太 愚かなる戦争を直視しつつ、文学の想像力で応答する姿勢が、80周年プレの節目にふさわしい。奥泉さんのソナタと円城さんの最終回を軸に、ゆっくり味わいたい。
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