
ピー子 『文學界』2026年9月号。新連載が磯﨑憲一郎「日本蒙昧前史 第三部」。谷崎潤一郎賞を取ったシリーズの完結編が始まるんだね。蒙昧の時代に迫る語りが、ついに一人の男を捉えるって。
ヨミ太 磯﨑憲一郎は1965年千葉県生まれ。三井物産で働きながら40歳近くで小説を始め、「肝心の子供」で文藝賞、「終の住処」で芥川賞を受賞した人。商社勤務を経て東京工業大学教授になった経歴も独特で、静かな筆致で歴史や人間の奥行きを描くのが上手い。待望の完結編、期待大だよ。
ピー子 創作がすごい顔ぶれ。町田康「津井田殺し・五里間の紋吉」、石沢麻依「眠れる瞼の行方(連作3)」、坂崎かおる「わに」、大濱普美子「地下の森」、竹中優子「幽霊と春のキャベツ」。
ヨミ太 町田康は1962年大阪堺市生まれ。元パンクバンド「INU」のボーカリストで、小説家転向後『きれぎれ』で芥川賞、『告白』で谷崎潤一郎賞など受賞多数。任俠スペクタクルの最高峰って、彼らしい荒々しくてユーモアのある世界が広がりそう。石沢麻依は1980年仙台生まれ、ドイツ在住。『貝に続く場所にて』で群像新人文学賞と芥川賞を同時受賞した人で、美術史の知見を生かした繊細な時空描写が魅力。連作の第3回、どう深まるか気になる。
ピー子 坂崎かおるは最近勢いのある人だよね。芥川賞候補経験もあって、SFや百合、ミステリとジャンル横断で短編の名手。
ヨミ太 そう、1984年東京生まれ。公募賞を多数受賞してから『嘘つき姫』『箱庭クロニクル』と活躍中。大濱普美子は1958年東京生まれ、ドイツ在住。フランス文学専攻で、『陽だまりの果て』で泉鏡花文学賞を受賞した幻想的な短編の書き手。竹中優子は1982年山口生まれ、歌人・詩人としても角川短歌賞や現代詩手帖賞を取ってから小説に進み、「ダンス」で新潮新人賞と芥川賞候補になった三刀流の才能。幽霊とキャベツって、彼女らしい静かで詩的なタッチが想像できる。
ピー子 新芥川賞作家のコーナー! 小砂川チトの特別エッセイ「すみやかにテントの設営を!」と、住本麻子の作品論「人懐っこく、「あなた」へ――『ゾンビ回収婦』論」。
ヨミ太 小砂川チトは1990年岩手(盛岡)生まれ。慶應義塾大学大学院修了後、「家庭用安心坑夫」で群像新人文学賞デビュー、3度目の候補で『ゾンビ回収婦』が第175回芥川賞を受賞したばかり。AIと仮想現実が絡む現代的な世界を、スピード感ある文体で描く。受賞直後のエッセイ、新鮮だろうね。住本麻子の論も、受賞作を丁寧に読み解いてるはず。

ピー子 特集「世界はいま」。創作にシリン・ネザマフィ「記憶の折り目に」、エッセイがブレイディみかこ「This is England 2026」と岩川ありさ「서울퀴어퍼레이드(ソウル・クィア・パレード)一景」。
ヨミ太 シリン・ネザマフィは1979年イラン・テヘラン生まれ。日本語で小説を書く作家で、『白い紙』で文學界新人賞を受賞、芥川賞候補にもなった。戦況に怯える日常から幼少期の空爆の記憶へ……イランから届いた生々しい声って、重いけど必読。ブレイディみかこは1965年福岡生まれ、英国ブライトン在住のライター・コラムニスト。『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』などで知られ、階級や移民問題を鋭く描く。2026年のイングランドをどう見るか、タイムリーだ。
ピー子 対談が金原ひとみ×吉田圭佑(KEISUKEYOSHIDA)「ファッションと文学」! 小説家とデザイナーの公開対談が誌面に。
ヨミ太 金原ひとみは1983年東京生まれ。『蛇にピアス』でデビューしてすぐに芥川賞を取った才女で、性や身体、現代の孤独を過激に、でも繊細に描き続けてる。吉田圭佑はファッションデザイナーとして知られる人で、怒りの向こうを見つめる創作って、両者の感性の交差が面白そう。
ピー子 書評エッセイに小島日和、レヴューに中村佑子「Reality is delicate.」。特集「まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険」展をめぐって、対談が石内都×竹内万里子「生き方を撮る」。
ヨミ太 石内都は1947年群馬桐生生まれの写真家。木村伊兵衛賞を女性として初めて受賞し、「ひろしま」シリーズで被爆遺品を撮り続け、ハッセルブラッド国際写真賞も受賞した国際的な巨匠。生き方を撮る対談、写真の本質に迫りそう。
ピー子 それと連載最終回が犬山紙子「むらむら読書」。
ヨミ太 犬山紙子は1981年大阪生まれのイラストエッセイスト・コラムニスト。『負け美女』でデビューし、ユーモアたっぷりに女性のリアルを描く人。最終回、どんな締めになるか。
ピー子 文學界図書室も宮本輝、吉田修一、長嶋有、鈴木涼美、仁科斂の新刊を、竹永知弘、柿内正午、奈倉有里、矢野利裕、松田樹が評してる。
ヨミ太 全体として、新連載の完結へ、新芥川賞作家の登場、世界の現在を映す特集、ファッションと写真の横断……2026年の文学の現在地をしっかり刻んでる号だね。
ピー子 夏の終わりにカフェでお茶を飲みながら、ゆっくりページをめくりたい。
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