
元消防士の「タイチョー」なる人物が、酷暑下で発生しうる大地震・台風といった「複合災害」の脅威と、その実践的な備えについて語る動画である。チャンネル名は「レスキューハウス」。タイトルの「【要警戒】」という言葉がやや煽情的に見えなくもないが、中身はいたって実直。
スーパーエルニーニョ現象が引き起こす40度超の猛暑に大地震や豪雨が重なる最悪のシナリオ——そのとき社会インフラはあっという間に機能を失い、避難所はエアコンも扇風機も効かない「灼熱のサウナ」と化す。動画はそのプロセスを淡々と克明に描きながら、ポータブル電源の確保、水嚢(すいのう)による排水溝の逆流防止、ハザードマップの事前確認といった明日からでも着手できる具体策を提示する。しかし単なる「備えましょう」という掛け声だけじゃなくて、何をどう備えるかが明確に示されているのがこのチャンネルの強みだと思う。現場を知る人間にしか語れない実効性と、修辞をそぎ落とした情報密度——防災コンテンツとして十分。

……ただ、見終わったあと放心するかな。
「タイチョー」の語り口は終始、揺れない。特に煽るわけでも、逆に聴き手を安心させようとすることもなく、ただ起こりうることと生き延びるための条件を告げ続ける。その真摯さが重い。じわじわと圧がかかってくる感覚があって、再生を止めたくなる衝動と、止めてはいけないという義務感の間で妙に消耗した。で、見終わったときは達成感よりも先に疲労感が来た。それはこの動画の欠点ではなく、扱っているテーマの重さが正直に伝わってきた結果だと思うのだが、それにしても…。
もうひとつ、タイチョーはどう見ても、イケメンである(笑)。ほんで爽やかに、「絶望的な被災シナリオ」と「生存の残酷な条件」を語る、というこれ、このビジュアルと内容のギャップが奇妙な作用をもたらす。顔が整い、爽やかであるほど言葉の重さが際立つのだ。同じ内容をもっと憔悴した風貌の人物が語っていたなら、視聴者は心の準備ができたかもしれない。だがタイチョーの場合、見た目のスッキリと語る内容の過酷さの落差が大きすぎて、「ここまで観る者を暗い気持ちにさせるイケメンもめったにいない」と半ば感心してしまった。
間違いなく見ておくべき動画だ。だがオチてる精神状態で再生すると、リアリティにじわじわ圧倒される。心が凪いでいる日を選んで、覚悟して観ることをお勧めしたい。
水野翼
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