ヨーロッパで異言語に囲まれて日本語で書くこと。次々と場所を移動しながら書き続けること。パッチワークのように世界はつながってゆく。モザイク模様になって新しい世界を見せてくれる。そこに新しい文学と新しい作家の居場所が見つかる。それは『ショッキングピンクの時代の痰壷』であるだろう・・・・。

第三回文学金魚奨励賞受賞作家・青山YURI子による14のfragments実験小説!。

by 青山YURI子

 

 

 

 

握って、放す

 

 

物語が書かれた一枚を丸め、手の平に握り込む。

適当な大きさに開いて、適当な角度から解読可能な文字を拾う。

 

―――

 

 

塗装され 木目の鮮やか とテーブル。トルコの兵 出す のま

とまりが3、4つ。の が入るくらい大きな口を開けて眠気を放 。

背 テーブ に いたこと 確かだ。青いかつらをかぶり、 を手に取り 足を

を少し過ぎ頃、お茶   て寝る にこの時間を振り返って

 ごとく同        三重にもなっ

                  の間 。外国

花はいつもの観光地とは全く違う空間に居るこ  不快な感

すます外の   かき消して    感じ 築物の   人と

たい一つの面を持つ壁、 大           感じら

 「これ全部 食 ちゃって」「           感じら  無機物と

い。観光地 外国なのか、日本な か っ 人が言った。家

 小鳥も鳴かないし、車や人の入って けていく  ない。山 でに

覗け いシート 貼られた窓を、時折警戒心を持  な、 流れる動きを

いる。空くな  も の時リ花は、そのような解釈を  人太は何か号令を

揺れ 近辺には兎や スや、野 の遊べる静寂さをは持  な   は小さな れに

      々の声は大きくなり萎み、  太波、小波   ぶんと揺れ

し寄せる、離れ   し寄せる、離 。 彼らの声が離れ  侍は  意識が遠

。客の声の波はこんな貝殻  葉の破片を  の 耳元へと残す  「」

                              ケット

                                   上

 誰かとそ  後 何が必要か  ペットボト 財布、  チケ  た

全てリュック

    ントケのぺ          確認てた。茶、チケ

 

                         たちこ  の場の主導

                   う       ちらへ   てくる

                   次の観        ム(小文字)の  パイ

                  ているの

          に引      ぎながらどこかに飾られていた?ビー かで

                        でもない。き と叩けば

                  振  も    引き出 付けて、一

                                 ?マ

                      、 今

                        くな よ 、

 

 

な言葉を使って、

て手に振る。

「なんなの。やっぱりわた    用事?」そのフレーズを心 -、無関心に女を視野の片

女の影が石の床に伸び る。ゆらゆ 揺らめきながら、くんくん伸びる植物さな らに、

方に向かって。

 

 

 

―――

ノート

・錯覚した文字はそのまま写した。

 

結論

・物語は眺める角度、読む方向から全く違ってくるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

即席短編

 

 

 少し休憩しようと思う。キッチンに行き、戸棚を開き、16袋ある『即席タンペン』の封を一つ、開いた。これで試すのは3つ目、今日は〝マコンド・ハポネス〟の袋。紫色の紙には、金色に型どられた牛が中央にプリントされている。裏を見る。所要時間:熱い紅茶-1杯分。とてもぬるいお茶-2.5杯。

 即席スープと梱包も中身もよく似ているから、慌てた妻が間違えぬよう、高い所に保管してある。

 マグカップに『即席タンペン』の元を入れる。まだ乾燥した、四角い固まりだ。

 

 

 

本当に私の息子たちよりもずっと牛だわ門

こうしてふいに牛が現れた。車のガラス窓

向いて、ゆっくりとカウンターに近づいて

0人ほどが住む小さな町で、全ての課が同

に配列されている。毎日たくさんの人々が

事、本当に小さなものから、結構重要なこ

て、訪ねてきていた。彼らの中でもドーニ

の筆頭、毎日同じ場所へ来て、変わらぬ要

た。行政の車トチップスを張る人ガラスカ

子たちに施さなかっ溢れていよい躾を施さ

内には災害注意を促す紙があって、二番目

 

 

 

湯を注ぐ

 

 

寝てポテトチップスを頬張る人は牛になる、と書いてあるでしょう。

じゃあもういいですね、もっと重大な問題がこの町には溢れているのです。

よってたは息子たちにもっとよい躾を施さなかったんですか。ほら。手の内には災害注意

 

      を促す紙があって、二番目には寝てポテトチップスを

      の町の誰もが知っていることですよ。じゃあもういい

問題がこの町には溢れているのです。

速さで牛が歩道を走っていたこと。ある時は子供たちが円陣になっている真ん中に牛が浮

 

        かび上がって現れたこと。田に何匹も、虫取り網

     食料はあるようだけど泥の中で身動きが取れなくなっていたこと。

     二匹の牛が現れる前日、ドーニャアスカは、学校から帰る時間にも、

見かけなかった。警察に連絡しすぐに何かいえば扉を閉めるし、もう部屋で何しようが、放っておいた。シケサビーア、いつか恐ろしい事が起こるって思ってた。

 この村では、時々こうしてふいに牛が現れた。車のガラス窓から外を覗いたとき、同じ速さで牛が歩道を走っていたこと。ある時は子供たちが円陣になっている真ん中に牛が浮かび上がって現れたこと。田に何匹も、

食料はあるようだけど泥の中で身動きが取れなくなっていたこと。

 

 

 

3分後

 

 この町では過去6ヶ月間に雄牛と雌牛、合わせて7匹の牛になった人間が出た。ベッドでお菓子を頬張ったり、布団の下で何日も無為な時間を過ごしたからだと言われている。一見何の変哲もなく、他のどの小さな町とも同じように、町を構成する必要最低限の要素がシンプルに揃っていた。郵便局、市役所、小・中学校、スーパー、昔ながらの商店街。町の境界の東側にはずらりと牛舎が並んでおり、牛舎に補強された力強い線を航空写真で見なくとも、牛の匂いを嗅ぎとれば、人々は今まさにこの土地へ入ろうとしていることを知るのだった。

 ここは日本で唯一、迷信がリアルになる、と知られている町だ。

 牛舎にはほとんど毎日、40近くになる女が訪ねてきていた。ドーニャアスカ。喪服ベールのように未だ白髪一本混じらない髪を腰まで垂らし、最近捕獲された3匹の牛と共に特別な柵に入れられた二匹を前に、毎日すすり泣いていた。二匹の牛は、彼女の息子と娘であった双子、タケとミカだった。

 牛が二頭、このまま柵を破って、彼女の胸に突進してくる様を想像した。二匹は胸の中まで来ると、霧のようになってまた拡散していった。

 「ポブレシートス、彼らはまだ成人する前であったのに!」啜り声を上げながら彼女はつぶやいた。

 

 

 

 二匹はもうすぐ、一ヶ月以内に、別の大勢の牛の群れの中へ放り込まれてしまう予定だった。もちろんその後は悲しい運命が待ちうけていて、雄牛は県の特産だと有名な肉になるのだったし、雌牛はこんなに濃厚なミルクがあっていいものか!との売り文句が話題のアイスのために、乳牛になるのだ。ドーニャは彼女の双子が肉と乳になる運命に耐えきれず、何とか方法を見つけようと、今日も市役所に掛け合うことに決めるのだった。町の規則では、迷い牛は見つかった日から二年は別の柵で飼われるけれども、定められた期日をすぎると、他の牛と混ざりあい、正式に牛として見なされることになっている。翌月はちょうど双子が消えてから二年、二匹の似通った牛が野球場で早朝に捕獲されてから二年経つ頃だった。「あなたには本当にその二匹が双子だという証拠があるんですか?」畜産課の役人はドーニャアスカに尋ねた。

 「実は本当に、同じ場所に黒く大きなアザがあるんです。肩の後ろと、腕(前足)の脇に。」彼女は言った。

 「でもそんなもの、どこの牛だって同じ場所にあるじゃないですか!」役人は答えた。

 市役所にアスカが入る時、役人たちは一斉に振り向いて、カウンターに近づいてきた。4000人ほどが住む小さな町で、全ての課が同じカウンターに配列されている。毎日たくさんの人々があらゆる悩み事、本当に小さなものから、結構重要なことまで、抱えて、訪ねてきていた。彼らの中でもドーニャアスカはその筆頭、毎日同じ場所へ来て、変わらぬ要求を繰り返す。「私の息子たちを、どうか自由にしてください!」

 なので町の規模に合わない馬鹿でかい自動扉-この扉が町全体を飲み込んでしまいそうだ-が開くとき、役人は彼女の姿を認めると、今日も来たとばかりにカレンダーに丸を打ち、全員でゆっくりと近づいてきて、彼女の方へ身を乗り出すのだった。

 『この人たちは本当に牛みたい。』ドーニャアスカはつぶやく。人の体をしていても、この好奇心。実際、私の息子たちよりもずっと牛だわ。

 確かにその通りだった。彼らはみな白いシャツを着て、暗色のズボンを履いていた。-更に悪いことには、あまりにもふいに牛が湧く町だと何度かニュースで取り上げられたため牛が町のトレードマークになっていて、県の指定でいくらかの行政人(観光課の3人)は牛柄のシャツの着用を義務付けられていた。-規則によって、役人たちは髪を染めることを禁止されていた。黒い毛か白い毛、そのどちらかだった。

 「町の規定では、ある日突然出没し、我々の町で捕獲された迷い牛は二年の間、様子を見るけれど、変わった兆候がなければその後正式に他と同じ牛だと認めることになっています。規則ですから、ロシエント。」

 役人は要件も聞かずに述べる。いつもと同じセリフ。

 「カブロネス!」アスカは小さく叫んだ。

 「じゃあ、なぜあなたは息子たちにもっとよい躾を施さなかったんですか。ほら、これを見てください。なんなら今日も渡します。」役人の手の内にはこのような災害を防ぐため、注意事項がまとめられている用紙があって、二項目にはいつもの通り(2007年版から改定されていない)、寝てポテトチップスを頬張る者は牛になる、と書いてあった。「この町の誰もが知っていることですよ。では、もういいですね。お引き取りください。もっと重要な厄介事がこの町には溢れているのです。」

 寝て食べると牛になる……いつも私は子供たちに注意深く言い聞かせてきた……でも彼らも中学に上がり、何か言えば部屋にこもり扉には「入るな」の文字。もう何をしてるのかさっぱりだった。でも確かに、いつか恐ろしい事が起こるだろう、そんな気がしてた。

 

 町ではふいに牛が現れる。車のガラス窓から外を覗いたとき、同じ速さで牛が歩道を走っていたこと。ある時は、子供たちが運動会の練習で円陣になっている時、中央に牛が浮かび上がって現れた。田に何匹も、虫取り用の粘着シートに捕まるように立っていて、草を食べ、食料はあるようだけど泥の上で身動きが取れなくなっていた。

 二匹の牛が現れる前日、ドーニャアスカは、学校からとっくに帰っている時間にもかかわらず、二人を家で見かけなかった。「入るな」に惑わされ多少遅れたが警察に連絡し、捜索を始めたが見つからない。翌日悪い予感がして朝刊を広げてみると、やはりそこには「地域」のページ、〝彷徨い牛〟の欄に二匹の若牛が早朝、草野球場で発見された、とあった。

 「残念ですけど、そういうことなんです。もうお分りでしょうがここではこんなことは珍しくないのです。毎日たくさんの人が市役所を訪れます。何しろここは迷信や諺が現実になる稀少な町ですからね。」役所の人は言った。「我々は国から大事にされてます。中にいれば少し大変な事があってもご愛嬌…」「ほら、他の部署も見てください。」大仰に腕をスライドさせて隣列を指して言う。

 

 

 隣のカウンターは消防課だったが、初老の女が一人、所定の紙に何やら記入していた。急いでいるようで、紙に書くべきことを殆ど口述していた。

 「昨日、夫と激しく口論しまして。もしも明日この町で火事が起きるようでしたら、それは私たちが喧嘩をしたせいなんです。それで消防車を予約したくて。これまでも何度か喧嘩をしたことはありましたけど、どれも些細なもので、自分たちで消すことができました。でも明日は、明日こそは、大変な火事が起こるはずです。火は町を覆ってしまうかもしれません。近所の人に迷惑をかけるかもしれません。私たちはすでに荷物をまとめて、車に積んであります。今から逃げるところなのです。

 はい、これでお願いします。全て記入しました。」

 この課では一ヶ月にこの種の申請が小火事から大火事まで10ほどあった。殆ど全て本当になったから侮れない。

 所定の用紙には喧嘩の内容まで事細かく記載する。意外にも男が怒ったケースの方が、より大きく燃え上がった。

 「しかし、なんて喧嘩が多い町なんだ!」書類を受け取った職員はあやうく紙を握りしめそうになった。「でも不幸中の幸いか、この町の人々は運がいい。少なくとも火事を予測することができるし、逃げることもできるから。」

 

 さらに隣の自然保護課では大きな水槽に手をかけた初老のイケメンが立っていた。

 「ご要件はどちらでしょうか。」事務の女性は言った。

 「蛇を持ってきました。」

 「メスの蛇ですか?」

 彼は答えなかった。暗黙の了解で事務員は自分の机まで行き、書類を手に取り戻ってくる。

 男は紙を受け取ると、一つずつ空欄を埋めていく。始めに蛇の名前。トモコ、マサコ。

 これは執念深い女たちが姿を変えた蛇だった。二匹をこの役所に預け、もう彼の後を追わないようにするためには、書類に必要事項を記入する。状況や、思い当たる節、蛇の模様との合致があるか…など。正式に彼女らがこの二匹だと認められるまでには3ヶ月。申請した後、別日には100メートル以上男の後を付けるかどうか、検査まで受けなければならない。

 「一匹はトモコのよく使っていた口紅と同じ色の皮をしているんです。こんなに赤い蛇、見たことないでしょう?そしてもう一匹、こいつは確実にマサコですよ。彼女が生前、ああ、こんなこと言っちゃいけないかな、あんなに自慢にしていた、この頭部と足ー尻尾の白い肌。そしてこの目…。」

 元々人だった動物たちは、前の姿と同じ目をしているのが特徴だった。彼らをよく知っている者には確信に近い覚えがあるが、そうでない者には、何かはっきりしたもので示さなければならない。

 「写真は持っていますか。」

 「そんなもの、全て処分してしまいました。とうの昔に。二人とも、家まで押しかけてきた当時と同じように、一人は玄関口で、もう一人は勝手口で私を待ち受けていて…。私は恐ろしくて。捕まえる時なんて、噛まれると思えば、手の甲に吸い付いてきました。すると不思議なことに、彼女の赤い色素がほんのり私の手につきました。」

 水槽の中では、尾を互いに絡ませながら、二匹の蛇が男の方を向いていた。「どうか二匹を別々の水槽に、そしてそれぞれに適当なオスを当ててやってください。」最後の思いやりとばかりに自己に酔いながら、自由欄にはこう付け足した。

 

 

 犯罪課では、ベテラン職員がある老女の電話を受けていた。「あのね、昨日私は息子夫婦に殺されそうになったのですよ。二人はわざと不適切な方法で箸を使ったんです。皿から食べ物を移す時、わざと箸と箸の先をくっつけて…。嫁はチキンを息子にあげる時、直接皿におけばいいものを、わざと先端が擦れるようにしたんです。この方法では両親が亡くなってしまいます。もう夫は死んでいますから、狙いはもちろん私でしょう。もしも私が数日中に死ぬことでもあったら、彼らが悪事を謀ったからです。どちらにしろ、私はこれから病院に行きますよ。もし私に何かあったら逮捕状をとってください。」

 近年は町で自殺する者も増えていた。それは、『北枕で寝ると死者になってしまう』という言い伝えを乱用したものだ。時計の針の向きを変えるくらいに簡単に、頭の方向を変えて目を閉じるだけで、容易に死に到達することができると気づいた人々は、どこからともなく広まったこの方法に気軽に手を染め始め、仕事に疲れたサラリーマンだけでなく、この町の特殊な力の支配下で、倦怠に耐えきれなくなった若者たちにも広がった。

 「悲しいことだ!」23の時から休日を返上して迷信に振り回されてきた職員の男は考えた。これら全ての不吉な出来事を消す方法でもあったらなぁ…牛や蛇のケースみたいに、ここでは小さな失敗が人の運命を左右する…そしてこのセニョーラ、と、ちらりとアスカの方を見た。彼女も、ここの職員に負けじと、息子たちのことを考えるあまり、白と黒のファッションに慣れていて、牛らしかった。

 「ほら、セニョーラ。こんなに忙しい市役所なんて、他にありはしませんよ。」一連のカオス的な状況を見せたあと、アスカを担当していた男は彼女をもう一度説得しようとした。「諦めてください、双子のことは。」

(第05回 了)

 

 

c‘縦書きでもお読みいただけます。左のボタンをクリックしてファイルを表示させてください。

 

 

* 『ショッキングピンクの時代の痰壷』は毎月12日にアップされます。

 

 

 

 

■ 予測できない天災に備えておきませうね ■