第2回 文学金魚奨励賞受賞作 ルイス・キャロル著 星隆弘訳『アリス失踪!』(第04回)をアップしましたぁ。星さんの『アリス失踪!』を読んで、翻訳にも実に様々なアプローチがあるんだなぁとお思いになった方も多いと思います。石川もその一人です。この訳し方、とても意欲的で面白いです。

 

キャロルの『不思議の国のアリス』は発表当時から話題で、当時のベストセラーになりました。もちろん主な読者は子どもたちでした。しかし20世紀中頃からキャロル研究が本格化し、また『不思議の国のアリス』が英文学の古典とみなされるようになったため、キャロル作品はどんどん遠いものになっていったように思います。キャロル作品は、子どもの読み物から大人の研究対象になっていった面があるわけです。

 

ただ星さんの訳では、それがグルッと回ってまた子どもの読み物に戻ってきたように思います。もちろん単に一周したというよりは、新しいアプローチがくわえられています。その一つがアリスの一人称小説の訳し方でしょうね。アリスの内面によって不思議の世界が膨らんでゆくように訳されています。

 

キャロルが生きたエリザベス朝は、特に女性にとっては生きにくい時代でした。キャロルの同時代人に『嵐が丘』で有名なエミリー・ブロンテがいますが、彼女は本を出す時に男性のペンネームを使わざるを得ず、また『嵐が丘』が評価されたのは死後のことです。その内容が極めて抑圧的な男女の愛を描いているのは言うまでもありません。

 

家庭教師に教育されながら監視され、外界との接触を最小限に制限されて育つのが当時の貴族の娘さんたちでした。『不思議の国のアリス』がなぜ彼女らの心を捉えたのかは言うまでもないですね。アリス一人称の訳し方は、現代的であると同時に原作に忠実な方法なのかもしれません。

 

 

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