佐藤知恵子さんの文芸誌時評『No.010 オール讀物 2014年08月号』をアップしましたぁ。浅田次郎さんの『流離人(さすりびと)』を取り上げておられます。オール讀物さんの特集は「戦争を忘れない」で、その目玉になる作品です。佐藤さんは、「きゃぁぁぁぁっ! 次郎様よ!・・・オール様にはいろんなスター作家の先生方がお書きになりますけど、次郎様以上のスーパースターはいらっしゃいませんわ。アテクシ、フィギュアスケートの浅田真央ちゃんが休養して、高橋大輔君が引退しちゃってから、どのジャンルにも絶対にスーパースターが必要なんだわぁと痛感しましたの」と書いておられます。相変わらずテンション高いですね(爆)。

 

『流離人』は主人公が電車の中で老人と出会うところから始まります。かつて中国大陸に出征していた方です。老人はその時の体験を話し始めます。佐藤さんは「現代と過去に列車を走らせることで、次郎先生は私たちも沢村たちも同じ列車に乗っていて、同じ方向に向かっていることを示唆しておられます。沢村老人の話はもう終わってしまった昔話ではなく、わたしたちの未来へと続く物語でもあるのです」と書いておられます。些細なようですが、浅田先生ならではの繊細な小説テクニックです。

 

老人は帝国大学の学生だった時に兵隊に取られました。ただ帝大生ですから少尉待遇です。中国に赴任したのですが、その途中で貫禄のある中佐に出会います。当時の中国戦線は混乱していて、軍から命じられた赴任地に到着するのも容易ではありません。中佐は若き日の老人に、このまま任地に着くのを遅らせて、戦争が終わるのを待てと示唆します。

 

佐藤さんは、「中佐が「お国にかわって詫びてくれた」というのは、常に無謬を装い、特に人の命がかかった戦争状態では絶対無謬でなければならない権力を前提とすれば、次郎先生のナイーブな理想思想の表現であるのかもしれません。しかし「死にはしないが、もう日本へは帰らんよ、と言っているように思えた」という記述はどうでしょうか。列車は走り続けているのです。あの戦争によって生じた様々な問題はまだ終わっていません」と批評しておられます。じっくり読んでお楽しみください。

 

 

佐藤知恵子 文芸誌時評 『No.010 オール讀物 2014年08月号』 ■