Ⅲ 色
大野露井
しろねりの濁った心
きみるちゃの肉をかきわけて
ふじむらさきの悦びを知る
色が溢れている
くろべにの路地に
うすぐんじょうの月が幽む
くちなしは秘密を守る
うすこうは逃げ去る
ふたあいは惑わせる
色が溢れている
ししが誘っている
きゃらのもっと奥までと
しろつるばみの肌のうえ
きんちゃの息を吐きながら
そほにまみれる
くわのみが流れ落ち
せいへきに驚かされる
くるみをおひとつ
うすざくらの舌に乗せる
くちばの疲労
うつぶしの口げんか
そらごと重ねて
くりうめの笑い声
せきちくは寄りをもどして
しかんちゃを喫する合図
きつねの化かし合い
色が溢れている
ろうが垂れておりかさなる
ぼたんねずの夢
けんぽうの猫の目
色が溢れている
ろくしょうが芽吹く
きがきではない
ちょうしゅんの鞘当て
からしのようにしみる
色が溢れている
色が溢れている
ローシェンナに惚れている
モーブの香気に包まれて
ノン・フォトのテーブル・クロスを
ズッキーニの汁で汚している
君はもう好きなように色を見ている
のの字を床に書きながら
色が溢れている
数かぎりない色が
もはや色がなくなるほどに
残った色も呑み込むほどに
ぐったり色に酔うくらいに
色が溢れている
抱いてくれ
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■ 予測できない天災に備えておきませうね ■