「文学金魚」で連載中の星隆弘さんの評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』は、末松謙澄の英訳した『源氏物語』を繊細に紐解きながら、翻訳の奥深い魅力を探る、なんとも心惹かれるシリーズなんだ。第1回(2024年5月11日、https://gold-fish-press.com/archives/92409)から第14回(2025年6月11日、https://gold-fish-press.com/archives/99108)を読み進めると、星さんの鋭い視点とその一貫した情熱が、まるで月光のように静かに輝いてるのがわかるよ。
この連載の鍵となるのは「戻し訳」っていう、なんとも粋な手法。末松さんが英語に訳した『源氏物語』を、もう一度日本語に織り直すことで、原文と翻訳の間に漂う「溝」――言葉や文化の違いが織りなす微妙なズレ――をそっと浮かび上がらせるの。第1回で星さんは、この「戻し訳」の心意気を、まるで詩のように綴ってるんだ。末松さんの翻訳は、明治の時代に日本の古典を西洋に紹介した、ほんとに大胆で美しい挑戦だった。でも、その過程で『源氏物語』の繊細な色合いや文化の香りが、どれだけ残って、どれだけ変わったのか、星さんはそこをじっくり見つめたいってわけ。末松さんが英語の読者に寄り添って物語を編み直したから、原文のニュアンスが少し別の光を帯びた部分もあるんだよね。そんな秘密を「戻し訳」で解き明かすのが、この連載のたまらない魅力なんだ。
第1回を読んでいると、星さんが「戻し訳」の方法を、まるで細い筆で描くように丁寧に説明してるのが印象的。単に英語を日本語に戻すんじゃなくて、元の『源氏物語』と見比べながら、翻訳で消えたものや新しく生まれたものを、まるで宝石を磨くように見つけるの。たとえば、末松さんがどんな言葉を選び、どんな文体で物語を紡いだかは、彼の時代や英語圏の読者の心に寄り添った結果なんだって。星さんはそこを繊細に読み解いて、翻訳が『源氏物語』の魂をどれだけ抱きしめて、どれだけ自由に羽ばたいたかを教えてくれる。翻訳って、ただ言葉を移すんじゃない、文化をそっと橋でつなぐアートなんだって、胸がきゅっとするよね。
第14回まで進むと、連載がさらに深みを帯びて、まるで夜の海みたいに静かで広がりがあるんだ。この回では、特定の章やシーンに焦点を当てて、原文と末松さんの訳を並べて、どんな「溝」が見えるかを具体的に語ってる。たとえば、『源氏物語』の詩のような表現や心の揺れが、末松さんの英語では少し簡潔になったり、逆にきらっと光を増したりするんだって。原文の曖昧で多層的な美しさが、英語ではちょっと別の顔を見せることもあるみたい。でも、末松さんが西洋の文学の枠に『源氏物語』をそっと置いたことで、新しい輝きが生まれた部分もあるって、星さんはちゃんと認めてる。この「光と影を両方愛する」みたいな視点が、星さんの評論に深みと優しさを与えてるんだよね。
この連載の素敵なところは、星さんの真剣な探求と、文学への愛が、まるで薄絹のように重なり合ってるところ。『源氏物語』っていう日本の宝を、翻訳のレンズで新しい光に照らすのって、まるで古い書物をそっと開くようなドキドキがあるよね。しかも、末松さんっていう明治の翻訳者の足跡をたどることで、当時の日本が西洋とどんな風に心を通わせたかも見えてくる。星さんの文章は、ちょっと難しい話もあるけど、どこか詩的で読みやすくて、文学が好きな人の心をそっと掴むんだ。
ただ、ほんとのところを言うと、かなり緻密な分析だから、『源氏物語』や翻訳に詳しくない人には、最初はちょっとだけ「?」って感じるかもしれない。だけど星さんは具体的な例や引用をたっぷり使ってくれるから、読んでるうちに「そっか、こういうことか」って、ふっと心が開く瞬間があるんだ。特に第14回は、テキストを丁寧に引用して解説してくれてるから、翻訳の「溝」を肌で感じられるよ。
こんな風に、星隆弘さんの『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』は、翻訳の不思議な魔法で『源氏物語』の新しい顔を見せてくれる、なんとも心揺さぶられる連載なんだ。古典や、異文化がどうやって手をつなぐかに興味があるなら、きっと心に響くよ。「文学金魚」がこんな深い話を、気軽に手に取れる場所で届けてくれるのって、ほんと素敵だよね。『源氏物語』を愛する人はもちろん、言葉や文化の物語にちょっとでも心惹かれるなら、この連載で新しい光を見つけてみてよ。
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