世界は変わりつつある。最初の変化はどこに現れるのか。社会か、経済か。しかし詩の想念こそがそれをいち早く捉え得る。直観によって。今、出現しているものはわずかだが、見紛うことはない。Currency。時の流れがかたちづくる、自然そのものに似た想念の流れ。抽象であり具象であるもの。詩でしか捉え得ない流れをもって、世界の見方を創出する。小原眞紀子の新・連作詩篇。
by 小原眞紀子
調
調べを
調べて
調える
朝からの仕事は
陽の匂いのする
窓辺の陰に坐り込み
端からみる
少し手繰って
その端からみる
何のために
誰のために
問いは無為である
移動は無意味である
手繰り寄せながら
その場で沈む
手に触れたものは
足に触れ
聞こえたものに
目を見張れ
五感をもって
把握された
ここ
陽の匂いがする
窓辺の陰で
調べている
調べを
流れゆく
すべてを
宵闇がせまるのに
気づかず
階調とともに
降りてゆく
どこ
わたしのいるところ
五感のあるところ
七日目に蹴られて
這いつくばるところ
時間と場所が
落とし込まれる
そこ
あなたのいるところ
糸を弾き
調子をととのえる
世界の感染者数は
減少傾向にあり
空には神の手が
雲となって
NY金の週足は
振り下ろされそう
残念だね
ポジショントークは
そこまでだ
あなたの言葉は
飛び跳ねる調べ
わたしは調べよう
その飛沫と
ストレスを
Zoomで
距離はとられるから
わたしは沈み込む
わたしの内へ
Stay Hoom
地下室の階段に
巻いたリボンを落とした
Stay Hoom
クローゼットから
道行きがはじまる
Stay Hoom
壊れた人形に出会い
砂糖菓子をあげた
Zoomで
関係は簡潔に
締めくくられるから
世界
ここ
世界
ここ
隅々まで調べることが
調えること
調えば
回復する
神の手が指差す
空へと
だからここにいても
陽の匂いがする
五感の最後は
勘に通じる
頭の後ろの
筋肉が引き攣る
先頃
人の肉体の
未知の領域が発見された
鼻の奥に
唾液腺の一種が
わたしはあなたの
言葉をほぐし
ここで調える
すべてを知るが
わたしを知らず
* 連作詩篇『Currency』は毎月09日に更新されます。
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