大野ロベルトさんの連載映画評論『七色幻燈』『第二十一回 乾いた人』をアップしましたぁ。サム・ペキンパー監督の『わらの犬』を取り上げておられます。ダスティン・ホフマン主演の1971年の映画です。石川は子供の頃見ましたが、ゲッとなるくらひ暗い映画でありました。ホフマンは1967年の『卒業』でスターになったわけですが、あの映画は内容はともかく背景は明るくてリッチでした。70年代に入るとアメリカ映画の街や服装はびっくらするくらい暗く汚くなってゆくのであります。
大野さんは『この作品の背後に当時のアメリカの状況を透かしてみることは容易い。ベトナム戦争に対する大衆の嫌悪感はすでにピークを迎えていた。(中略)この戦争で多くの兵士の命を奪ったのはジャングルに仕掛けられたブービー・トラップであったが、それが作中でデイヴィッドが仕掛ける罠のなかに反復されていることも疑いを容れないだろう。そうするとペキンパー作品の大仰な血糊も、決して笑うべき映画作法とは言えまい。現実に流されている血のほうが、よほど馬鹿らしい毒々しさを放っていたからである』と批評しておられます。
60年代の終わり頃から映画に限らずテレビの映像もカラーになります。テクノロジーの変化に過ぎないのですが、その頃から現代に入ったという感があるのも確かですね。ロックミュージックなんかは基本的に60年代から変わっていません。情報機器も、現代ではインターネットが革命的な変化をもたらしていますが、その端緒は60年代にあります。
そういった、時代が〝現代的感性〟に入る1970年代初頭に、ペキンパーがもんのすごく暗く、人間の不穏な欲動をモロに表現したような映画を撮ったのは象徴的な出来事だったのかもしれません。人間変わったようで全然変わってないところがあります。いまだに『わらの犬』を傑作だと言う人が多いのは、この映画が人間存在の本質を抉り出しているからでしょうね。
■ 大野ロベルト 連載映画評論 『七色幻燈』『第二十一回 乾いた人』 ■
■ 第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■