「僕が泣くのは痛みのためでなく / たった一人で生まれたため / 今まさに その意味を理解したため」
by 小原眞紀子
鎖
からまるまるいわ
まるまるつながり
くるくるめぐる
ポールのまわりを
まちながら
まちをみながら
あなたがくるのを
いまかいまかと
くりかえしメールして
こちらにもコピーとどくし
こちらにはジャンクくるから
からまるまるまる
地べたに引きずる
鎖の跡が
くるくるのびて
あなたがくるのを
みつけたらつかまえる
みつかったらつかまる
まるまるつながり
くるくるめぐる
きみのまわりを
そらみろあいつも
ほれみたこいつも
きみをみている
からまるまるいわ
まるいちきゅうに
とどまるならば
きみがほだしさ
いついつまでも まる。
数
123、125、126、128
そろそろいこうか
つき上がってくる数が
僕の背中を押す
141、145、148、152
くらい沼の底から
空をのぞいている
201、213、222、247
少し気分がかわる
日差しを浴びたときみたいに
だから部屋を出る
そっと地面を踏みしめて
僕の身長は何センチあったか
今日の日付けはいつだっけ
通り過ぎた車のナンバーは
それを足してみる
意味はなく
生まれる数に罪もなく
ただ僕は立ちどまる
823、809、794、765
雲行きがかわったし
引き算は時間がかかる
729、666、623、585
つるべ落としの夕方
そろそろ帰ろうか
525、511、436、321
毎日、毎月こんなことするんだ
給与振込み日まで
葬式の会計が済むまで
姿
そこにいること
たしかにいること
輪郭があること
光をさえぎり
影をおとすこと
暗さがせまって
濃淡をつくること
入り交じり
リズムをつくり
話しはじめること
どこの言葉で、と躊躇して
それから流れるように
低いところへ
意味が重なっていく
パイナップルにミント
たっぷりのクリームチーズをそえて
そこにいる
ぼくもいる
ここに腰掛けて
午後いっぱいを過ごす
やがて影がながく
すべてを覆うから
たしかめるかわりに
灯りをつける
そこにいる
ずっといる
いなくならない
いなければここはなく
いなければときはない
写真 星隆弘
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* 連作詩篇『ここから月まで』は毎月09日に更新されます。
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