やはり、最初に目を奪われるのは、天井から吊るされた3体の大きなマリオネットではないでしょうか。
大きさは目算で2メートルほど。赤、青、黄、それぞれが背を向けあい、ぐるり全方位に視線を投げています。
ぐっと近寄ってみましょう。照明の加減も相俟って、その顔立ち――特に目元には、数分後もう一度確認したくなるような魅力に溢れています。
今回のテーマは、ミニー氏がここ数年閃きを感じるというマリオネット。タイトルも「パン屋 マリオネット」「道化師 マリオネット」「ピエロ マリオネット」等々。会場の左側には、愛嬌という一言では表しきれない、どこか懐かしく、また見方によってはコミカルな表情の作品が並びます。
中でも「マリオ おもかげ」には、飛び出していったマリオネットが、今し方キャンバスの中に戻ってきたような躍動感があります。
囲みの取材の際、立体作品に初めて取り組んだ理由として、夫・ミッキー吉野氏からの「キャンバスから飛び出した方がいい」というアドバイスを挙げていたミニー氏。
キャンバスからの「飛び出し方」は他にも示されています。壁に映し出されたのは、デジタルアーティスト・中原修一氏による3DCGを駆使した映像作品。いよいよ始まるようです。
ピアノが奏でるミステリアスな旋律に、ノスタルジックな音色が重なる、まるで物語の序章を告げるような音楽を手掛けたのはミッキー吉野氏。次々と映し出されるのは、実際に展示されている作品です。もちろん、おとなしく佇んでいるわけではありません。サウンドトラックに合わせて揺らめき、動き出し、跳ね回ります。絵画と向き合うだけでは見えなかった部分、云わば裏側まで露わになるので、まるで自分自身がキャンバスに入り込んだようです。
二次元が三次元に変容する映像は理屈抜きで面白く、敢えて難点を挙げるならば、一分半という時間の短さでしょうか。
それ以外にも場内には、袋戸(袋棚の襖戸)に描かれたカメレオン、トカゲ、ウサギ等、その小ささ故の愛らしさ、また深みが感じられる作品等が展示されています。
最後に個人的な感想をひとつ。入口のすぐ右側で静かに存在感を放つ「魚雷試験場」を、気付けば何度も見直していました。作品のサイズや質感も含めたパワーに圧倒されていたのでしょう。真正面から対峙できるように展示されていますので、是非作品の前に立って全身で感じて頂きたいと思います。
ミニー氏曰く、世の中は不気味な閉塞感で充満しています。そして、そんな閉塞感を解き放すのがアートだ、とも。
キャンバスの内外にイメージが溢れたこの空間で、そのメッセージを実感してみましょう。
寅間心閑
■ 展覧会情報 ■
『ミニー吉野展 ~マリオネットの夢~』展
2017年11月8日(水)~11月14日(火)
新宿高島屋 10階美術画廊 ※入場無料
※連日午前10時~午後8時まで開催
ただし11月10日(金)・11日(土)は午後8時30分まで
11月8日(水)は午後5時閉場
最終日は午後4時にて閉場
■ お問い合わせ先 ■
新宿高島屋 03-5361-1111(代)
■ ミニー吉野さんの画集 ■
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■