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ピー子 『すばる』2026年11月号、10月6日発売。集英社。第50回すばる文学賞の発表号だね。受賞作がオカワダアキナ「話の諸島」と佐藤勝乃「テクノロジカル・ポリス」。
ヨミ太 すばる文学賞は1977年創設で、既成の文学観にとらわれない新人を待ってきた賞。今回の選考委員は奥泉光、金原ひとみ、川上未映子、岸本佐知子、田中慎弥。応募は1803篇で、最終候補五篇から二作が選ばれた。オカワダアキナは1984年埼玉生まれ、「話の諸島」は220枚。佐藤勝乃は1982年宮城生まれ、「テクノロジカル・ポリス」は210枚。受賞者インタビューも編集部が聞いている。五十回という節目に、話の集まり方と技術の都市が並ぶのは、今の小説の入り口を示してる感じがする。
ピー子 選評が五人分載る。奥泉さんは歴史と虚構のあいだを歩く人だし、金原さんは身体の境界、川上未映子さんは言葉の密度、岸本佐知子さんは翻訳と奇妙な短篇の眼、田中慎弥さんは土着の暴力性。五人の読みがどう割れたか、受賞作と一緒にめくりたい。
ヨミ太 奥泉光は1956年生まれ、『石の来歴』で芥川賞、のちに『雪の階』などで大きな虚構を組んできた。川上未映子は1976年生まれ、『乳と卵』『夏物語』。田中慎弥は1972年生まれ、『共喰い』で芥川賞。岸本佐知子は翻訳家で、現代アメリカの奇妙な短篇を日本に運んできた人。新人がこの五人の前を通った、という事実だけでも号の重心になる。
ピー子 新連載が高瀬隼子「影踏む人のためのパレード」。不定期連載の最終回が綿矢りさ「シャブシャブ上海(4)」。
ヨミ太 高瀬隼子は1982年生まれ。第43回すばる文学賞を「犬のかたちをしているもの」で取って、『おいしいごはんが食べられますように』で芥川賞。ケアや食卓、見えない労働のあいだを、乾いたユーモアで書いてきた人だ。「影踏む人」というタイトルからして、誰かの後ろを歩く視線が続きそう。綿矢りさは1984年生まれ、十九歳で『蹴りたい背中』芥川賞。上海をめぐる不定期連載が四回で閉じる。
ピー子 憲法改正の見取り図として、安達茉莉子「平場の民主主義ノート 濁流のショック・ドクトリン──落ち合う場所を作る」。解説が五野井郁夫、司会が安達茉莉子と西本千尋。
ヨミ太 安達茉莉子はルポとエッセイを往復する書き手で、本誌でも「書きあぐねて山河あり」を長く連載している。五野井郁夫は政治学者で、民主主義の現場を観察してきた人。勉強会のルポ第二回として、改正論の濁流のなかで「落ち合う場所」をどう作るか、という問いを置いている。文学賞の号に、平場の政治が並ぶのもすばるらしい。

ピー子 最終回が姜尚中「岸信介の思想と行動(27)」。二十七回か。長い連載だったんだ。
ヨミ太 姜尚中は1950年生まれの政治学者。在日の経験と戦後日本の政治思想を横断してきた人で、岸信介を二十七回かけて追った。思想と行動の両面から、戦後保守の源流を小説誌の連載で掘る、という試みの締めくくりだ。最終回の置き方が気になる。
ピー子 連載も厚い。宮本輝「花園を探せ(4)」、町屋良平「言葉と太陽(8)」、髙樹のぶ子「小説 紫式部 墨染(10)」、山内マリコ「アンダーステア(16)」、滝口悠生「透波と乱波(34)」など。
ヨミ太 宮本輝は1947年生まれ、『泥の河』『蛍川』『青が散る』の人。市井の光と影を長く書いてきた大御所の新章が四回目。町屋良平は1991年生まれ、『青が破れる』で芥川賞。言葉と太陽、という対がどう展開してるか。髙樹のぶ子は1946年生まれ、『光抱く友よ』で芥川賞、紫式部を小説化する連載が十回。王朝と現代の筆がどう重なるか。山内マリコは1980年生まれ、地方と都市のあいだの生活感を書く人。滝口悠生は1982年生まれ、『死んでいない者』で芥川賞、忍者と情報の連載がもう三十四回。新人賞の号に、これだけの継続がある。
ピー子 コラムも賑やかだ。影山知明のコーヒー、梅佳代の写真エッセイ、年森瑛、小津夜景の「空耳放浪記」、朝吹真理子「記憶糠」、辻山良雄の書店日々、エリザベス・コールのエアプランツ。書評は石井千湖が川上弘美『スナックふたり』、松井玲奈が遠野遥『吸血鬼』、嶋津輝が石田夏穂『わたしを庇わないで』、大谷朝子がハン・ガン『私の女の実』。
ヨミ太 朝吹真理子は1984年生まれ、『きことわ』で芥川賞、記憶の糠を拾う連載が五十六回。辻山良雄はTitleの店主で、読み終わらない日々を書店から書いてきた。松井玲奈は俳優で書評も続けているし、大谷朝子は第46回すばる文学賞の人。ハン・ガンはノーベル文学賞後の翻訳が続くなかで、同世代の受賞者が評する構図もいい。プレイヤードでは沢美也子が『巨匠とマルガリータ』、山本聡美が文様の展覧会、野崎歓が映画『Blue Heron』。演劇・美術・映画・本が、小説の隣に並ぶ。
ピー子 厚いというより、層が違うものが同じ月に着地してる号だね。
ヨミ太 だね。まず受賞作の語り口を見て、高瀬さんのパレードの一歩目と、綿矢さんの上海の終わりを並べてみたい。すばるはいつも、新人の枚数と、連載の回数を同じ目次に置いてくる。コーヒー一杯で全部は無理でも、諸島の入口まではめくれる。
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